新聞記事から 2007

ここでは、新聞記事から社会福祉に関係のあるものを選び、紹介・解説します。

中学時代に統合失調症 「いじめと因果関係」
(2007年5月25日 日経新聞)

 広島地裁 同級生・市に賠償命令

 広島私立中学の2-3年当時,いじめで不登校となり,統合失調症になったとして,元男子生徒(19)と両親が,同級生4人と,広島市などを相手に計約2600万円の損害賠償を求めた判決で,広島地裁は24日,「いじめと発症には因果関係がある」として,計約830万円の支払いを命じた。
 能勢裁判長は,いじめが「被害生徒の身体的自由,人格権を侵害した」と指摘。
 同級生の両親は子への教育や監督を怠り,教師の注意義務違反もあったと述べた。
 判決によると,元生徒は中学2年から同級生4人に嫌がらせを受け始め,3年に進級後は万引きを強要されるなどいじめがエスカレート。2002年6月に不登校になった後,医師から統合失調症と診断された。

 【解説です】
 いじめが統合失調症の原因となるということが判決で出たという記事です。
 いじめは人権侵害になるという記事もあります。⇒http://blog.canpan.info/jitou/archive/1154
 ここのところ,いじめに関する認識が変化して来て,明らかに人権侵害であるということのようです。

 現在,統合失調症の発症は,脆弱性−ストレスモデル という考え方が取られています。つまり,生まれながらの中枢神経系の脆弱性(弱さ)に加えて,過度のストレスが加わることにより,統合失調症が発症するという考えかたです。
 この記事を元に考えると,いじめは過度なストレスを起こす出来事であり,本人の特質として脆弱性はあるにしても,いじめという過度なストレスが生じたことにより統合失調症が発症した,つまり因果関係が認められたということのようです。
いじめ防止へ 続く取り組み    相手の気持ち 考えて
(2007年2月12日 朝日新聞 朝刊)

 いじめをどう防ぐかは永遠の課題だ。事件が相次ぐなど注目が集まった時だけでなく,息の長い取り組みが問われる。いじめは良くない,と児童・生徒に教え込むのではなく,「相手の気持ちになり,自分で考える」ことを目指した例を紹介する。

 生徒をカウンセラーに 講座で「聞く方法」を学ぶ
 2人一組で向かい合って座る。1人がカウンセラー,1人は相談者の役割を務め,記録係が控える。
 「クラスの中で浮く,みたいになっちゃって」
 「それはきついね」
 中央大学杉並高校(東京都杉並区)が土曜日の講座で3年前に始めた「ピアカウンセリング」。ピアは「仲間」の意味で,学校の生徒同士で悩みを打ち明け,相談にのる手法だ。イギリスなどでいじめの防止に効果が上がっている。
 (中略)
 講座を担当する中央大文学部の横湯園子教授(心理学)によると,日本のスクールカウンセラーは,登校拒否など顕在化した問題を抱えた子の相談にのるケースが多い。「生徒によるピアカウンセラーを育てていけば,もっと気軽に相談できる。隠れたいじめとか,いじめの芽などを発見できるようになる」と話す。(平岡妙子)


解説です
 いじめの防止に「ピアカウンセリング」を活用する取り組みに関する記事です。
 対処療法としてのカウンセリングでは限界があるから,予防に取り組むことが重要であるということから,考えられた方法のようですね。
 このあたりになると,カウンセラーの役割というよりは,ソーシャルワーカーの役割です。カウンセラーは本来,カウンセリングを行なうのですから……。もちろん,カウンセリングだけをしていればよいというふうには思いませんし,このような取り組みが必要であるという考えには同感です。
 個人的には,ソーシャルワーカーという専門職があるのだから,もっと活用してほしいということです。

 従来,個人を対象にしたカウンセリングとは別に,集団の力を活用する方法や他の取り組みを考えることをソーシャルワーカーがやってきました。教育以外の分野では,ピアカウンセリングを行なうのは,ソーシャルワーカーがほとんどです。例えば,学級やグループを単位にしたグループワーク,家族を対象としたグループワーク,児童・生徒,家族,教員,地域の人などをコーディネイトするなどの活動です。
 個人を対象にしたカウンセリングに加え,本人が戻るクラスメイトというグループは,自分たちがした行動の背後にどのような気持ちがあるのか,それを「いじめ」と感じていたのか,感じていたのにどうしてそうしたのか……,等について児童・生徒自身が考え,より適切な対処方法を見つけて,その行動ができるようになることが重要です。一方的に教員から説教され,教えられても,問題の根っこは変わらないことが多いのです。きっと,同じような状況になれば,おなじ「いじめ」と呼ばれることになりかねないのです。むしろ,教員から怒られ,処罰され,一方的に教えられることで,「見つからない」ようにしようという気持ちが働き,より表面化しないようになるのではと思ったりします。

 いかんせん,日本においては,教育分野にソーシャルワーカーが入り込む余地は未だなく,制度化されていないという現状があります。しかし,欧米では学校(教育)分野におけるソーシャルワークとして非常に重要とされており,ソーシャルワーカーの配置も進んでいます。

 ここでインタビューに答えているのは,心理学が専門の先生ですが,もっとソーシャルワーク関係者は頑張らないといけないのではと感じました。そういう私も,頑張らなきゃ。
 
「認知療法」精神疾患に光    「見方・考え方のゆがみ」対話通じ改善
(2007年1月23日 朝日新聞 朝刊)

 うつ病や不安障害など,様々な精神疾患に悩む患者の治療法の一つとして,物事の見方・考え方を変える「認知療法」が注目を集めている。薬では治らない患者にも効果的な場合があり,再発しにくいというデータもある。集団認知療法に取り組み始めた佐賀県の病院でも,患者のうつ状態や不安感が改善される効果が表れている。治療を希望する患者も多いが,診療報酬上の問題もあり,なかなか広まらないのが現状だ。(岡崎明子)

解説です
 精神疾患の治療法としては,薬物療法が中心ですが,それ以外の方法もあります。薬物療法に加えて,ここで紹介している「認知療法」の他「認知行動療法」やSST等も非常に効果があるという研究が進んでいます。
 記事にもあるように,診療報酬として「認知療法」が認められているものの,一律3000円というために,採算に合わないということから,普及が進まないという現状があります。薬以外の効果的な治療法や対応に対しても,診療報酬として認められるような取り組みが必要であるということです。ただ費,診療報酬との関係でいうと,きちんと効果が証明されないと認められないということでしょうから,私たち研究者が診療報酬として認められるような取り組みをしないといけないともいえるようです。

 認知療法に関しては,次のようなサイトがあります。
 「なかおクリニックのページ」の中にある,「認知療法とは」
 認知行動療法学会
若年認知症 初の「サミット」 来月,広島で  患者ら,理解と支援呼びかけ
(2007年1月19日 朝日新聞 朝刊)

 主に働き盛りの年代が発症する「若年性認知症」は,軽度の人も含めると全国で10万人とも言われる。家族や住宅ローンなどを抱えたまま仕事を失う人が多く,高齢者と比べてサービスや施設も乏しい。そんな生活上の困難や不安を患者本人や家族が打ち明け,理解と支援を呼びかける「若年期認知症サミット」が2月,広島市で開かれる。当事者や医療・介護関係者らが全国規模で集まる初めての試みだ。(清野有希子)


解説です
 社会福祉は,貧困対策の流れがあります。また,制度としての対策がメインです。その結果,新しい問題に対する対応に対してはほとんど何も対策がなされません。その結果,「若年性認知症」のような病気を抱えている人は問題を抱えていても,利用できるサービス等の支援や施設もないという実情があります。
 京都市に事務局がある「認知症の人と家族の会」が主催するこのような会への支援をソーシャルワーカーとして取り組んでいくことが求められますが,新聞記事にあるように,まだまだ不足しているのが現状です。
 内容としては,精神障害を持つ当事者が行っているように,当事者や家族が自らの体験を語るという方法がとられるようです。このような取り組みをもっと広めていくことが求められます。

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