新聞記事から 2005

ここでは、新聞記事から社会福祉に関係のあるものを選び、紹介・解説します。 

やりくりナビ  医療コーディネーター
(2005年10月10日 朝日新聞 朝刊)

 重い病気と闘って体も心も苦しいとき,何でも相談できる専門家がいたら−。そんな願いに応えようと生まれたサービスが医療コーディネーターです。医師と患者の間に立ち,中立の立場で治療方法選びなどの援助をしてくれるといいます。すでに千件を超す相談実績があるそうです。サービスの中身と料金はどうなっているのでしょうか。

 面談2回 3万円が平均
 日本医療コーディネーター協会への相談は,出産トラブルからお年寄りの認知症(痴呆症)まで依頼者の病状や年齢層はさまざまだが,約7割ががん患者から寄せられる。
 相談内容は「治療方針に疑問がある」「診察に付き添ってほしい」「病院を変えたい」など幅広い。終末期患者からの相談もとぎれることがないという。


 解説です
 記事から読み取れる内容を表にしてみました。

どのような人が
するのか
回数 費用(1時間) 交通費 内容
5年以上の経験がある
看護師
2回 15000円 実費 ○診療同行
○本人に代わって医師に質問
○情報調査

 内容を読み,私は「医療ソーシャルワーカー」のことを考えました。看護師が行っていること,面談費用をとることなど,いくつかの店で医療ソーシャルワーカーとは異なります。
 医師と患者さんの間に立ちさまざまな相談にのることは,医療ソーシャルワーカーが行うことでもあります。なのに,この記事のような医療コーディネーターが求められているのはなぜなのだろうかと考えるのです。

 大きな違いはお金を取ること。病院という組織から独立しているということでしょうか。
 お金をもらっているということは,患者さんに対してお金をもらうだけのサービスをしないといけないということです。記事では,相談して安心感を得るためにお金を払うという発想について触れられています。
 患者さんのため(利益)になることを目指しているという意味では,医療ソーシャルワーカーも同じことを目指すのですが,中立の立場で,きちんとした相談にのるということを考え,医療ソーシャルワーカーとの違いについてもっと考えていく必要と,医療ソーシャルワーカーの存在意義を改めて考える必要を感じます。

 日本医療コーディネーター協会のHPは次の通りです。
 http://www.jpmca.net/
触法心身喪失者 専門病棟,建設進まず
 代用措置 施工前 法改正へ
(2005年3月27日 朝日新聞 朝刊)

 政府は,心神喪失などを理由に重大は犯罪行為の刑事責任を問えない人に対して入院治療などの処置を定めた心神喪失者観察法を7月の施行期限前に改正するため,与党と検討に入った。専門病棟が住民の反対などで十分確保できないためで,施工前に法律を改正するのはきわめて異例。都道府県立精神病院を代用するなどの経過措置を新たに盛り込む方向で,今国会にも改正法案を提出,遅くとも秋には成立させたい考えだ。(残りは省略)

 解説です
 2003年7月に成立した「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療および観察等に関する法律(新聞記事では,「心神喪失者観察法」と略されています)」ですが,その施行は法律の中に書かれていて,2005年7月までに施行することになっています。しかし,住民の反対や当事者,弁護士その他の専門団体からも反対が起こっています。そのために,法の施行そのものができない状態であるために,苦肉の策として今ある精神科病院を使おうということです。
 この法案の基本には,諸外国で行われているような濃厚な医療とリハビリテーション,そして社会復帰に関するプログラムが必要です。しかし,日本ではいまだ十分な体制がないまま法案が通り,専門病棟が用意されるということになっているように思えます。
 記事にあるように,「社会防衛のた,長期入院させられるのでは」という心配を,当事者や専門職の人たちが持つのは当然のことではないでしょうか。

 現在の精神科病院そのものの設置基準は,一般病棟と比べて非常に低い基準のままですし,医療やリハビリテーションに関しても十分なことができていない状況もあります。医療関係者やPSW(精神保健福祉士)も必要なことはあっても,環境的な制約があるためにできないというふうにも思えます。

 法律ができた。じゃあ,どうしようか。ということではなく,基本的なことも踏まえて考えたいですね。
子供の心に医療の力を
虐待・ひきこもり・不登校…支援へ
専門医育て/診療科目設置
(2005年1月31日 朝日新聞 朝刊)

 虐待を受けた子どもや不登校児など,深刻化する子どもの心と発達の問題に対応するため,厚生労働省は全国的な医療体制の整備に乗り出す方針を固めた。専門医を養成し,診療科目も新しく設け,街の身近な小児科医院でも早期に治療を受けられる方針を探る。(帯金真弓)

厚労省が方針
 専門医不足から児童相談所や学校で十分対応できていないうえ,表面化する前にケアが必要なケースにも医療の手が届いていなかった。そのため,国として初めて本格的な整備に乗り出すことにし,3月上旬までに検討会を設け,具体策を新年度中に出す予定だ。
 児童虐待で保護される件数は,02年度8369件あり,99年度の倍近くに急増した。だが,専門医が少なく,対応できない児童相談所も多い。また,不登校児も97年度から10万人を超え,歯止めがかかっていない。
 しかし,専門医の数は足りない事態が続いている。精神科の分野では,子どもも診られる精神科医は全国で推計200〜300人といわれ,人口比では米国の10文の1以下とされる。小児科では,発達障害を診る小児神経科の医師も300人程度だ。
 このため,子どもの専門外来がある医療機関では,初診を受けるのに2,3年待ちという事態が起きている。
 厚労省は検討会に精神科や小児科の医師らを集め,具体策を探る。
 子どもの心を専門に診てきた病院で医師を研修させ,出身病院や医院に戻って診療を初めてもらうことを想定。文部科学省も含め,子どもの精神医学についても講義が少ない大学のカリキュラムの見直しも検討したいとしている。

 解説です
 児童虐待が非常に増加している。虐待を受けた児童への対応のために専門医が必要であるということから,研修実施し,多くの病院や医院で対応できるようにする試みが始まるということのようです。
 このこと自体はとてもよいことですね。本当に,児童の心の専門医は少ないのですから。
 それに加え,児童虐待などに関しては,は環境(親など周囲の人)との関係も視野に入れないとなかなか解決に至りにくいといわれています。そのために医師だけでなく臨床心理の専門家や学校の教員だけでなく,社会福祉の専門家がチームワークを作り地域で対応することの重要性がいわれています。
 対応できる医師の研修だけにとどまらず,チームワークの形成や,児童相談所への専門職員の配置なども視野に入れる対応の必要性もあることを知ってほしいものです。

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