新聞記事から2003

ここでは、新聞記事から社会福祉に関係のあるものを選び、紹介・解説します。 

「社会的入院」 退院させて生活支援
厚労省初の試み 医師ら24時間態勢で
 (2003年5月4日 朝日新聞 朝刊)

 精神科の専門病院に「社会的入院」中の患者を退院させて,医師や看護師,ソーシャルワーカーらが地域で支援する初の試みを厚生労働省の研究班が近く始める。今年度は,国立精神・神経センター国府台病院(千葉県市川市)の患者40人を対象にする。全国で7万人とも言われる社会的入院の解消に向けた小さな一歩だが,厚労省は全国に広げたい考えだ。
 病状が落ち着いて入院の必要がないのに社会復帰の受け皿がなく,退院できない社会的入院は精神医療の大きな課題。米国では70年代から「包括的地域生活支援プログラム」(ACT=アクト)という,「脱施設化」を目指す活動が始まり,各国に広がっている。
 研究班の試みはこれを日本に導入しようという計画。同病院や国立精神保健研究所の精神科医,看護師,作業療法士,臨床心理士,就労カウンセラーら,医療,福祉の専門職10人でチームを構成。24時間態勢で退院した患者の生活を支援する。
 ふだんは生活上の様々な相談や職探しなどの福祉的な援助を行い,病状が悪化した際には速やかに医師が往診する−−といったように,医療と福祉の垣根を越えて素早く対応できるのが特徴だ。
 対象は,自傷他害や家族への暴力などで頻繁に入退院を繰り返しているような患者。本人の同意を得たうえで毎月5人ずつ支援する。年内に40人を想定している。
 研究班長で国府台病院の塚田和美・第一病棟部長は「バラバラに活動していた保健・医療・福祉の専門職が連携して生活支援にあたるところにACTの意味がある。社会的入院を一挙に解消できるとは思っていないが,普及のきっかけにしたい」と話す。

 解説です
 国立精神保健研究所が中心になって行われようとしている日本版のACTに関する記事が朝日新聞の2面に載っていました。ACTとは,Assertive Community Treatmentの頭文字をとったもので,精神障害者への地域支援システムのことです。
 精神障害者が当たり前に地域で生活できるように支援する方法として重要な方法と言われています。
 日本には,新聞記事にあるように7万人以上の社会的入院者がいると言われています。これらの人は,適切なサポート態勢があれば,地域で生活することが可能であるのです。しかし,実際には,そのようなサポート態勢はまだ不十分であり,そのための方法としてACTが求められているのです。
障害者向け福祉 足りぬ参入業者
支援費制度 4月実施近づく
 (2003年1月5日 日本経済新聞社 朝刊)

 介護保険制度と同じように身体・知的障害者が福祉サービスを自ら選んで契約する支援費制度が4月からスタートする.ところがサービスを提供する事業者の指定が思うように進んでいないため,サービスを実質的に選べない障害者が続出する恐れがある.自治体は危機感を強める一方,障害者からは「一体どうなるのか」と不安の声が上がっている.

 (前略)
 「このままでは自由にサービスを選べる制度の趣旨と懸け離れてしまう」と大阪府の担当者は話す.府の居宅介護事業者数は昨年12月27日時点で221事業所(89法人).9月の22事業所(8法人)より約10倍になったものの,「現行の措置制度と比べると見劣りは否めない」という.府ではサービス提供に実績のある事業所に指定を受けるようにダイレクトメールを出すなど事業所の確保に懸命だ.
 事業者の参入が遅れている背景には,行政が事業者に対して支払う各サービスの単価が確定していないことがある.
 厚生労働省が最低基準となる単価を正式に告示するのは2月ごろになる見込み.告示を受け,各自治体は議会でそれぞれの財政事情に合わせた単価を決めるため,最終的には制度開始直前の3月にずれ込むところも多そう.
 どんなサービスを受けられるのか分からないまま,障害者が自治体から支援費の支給を受けるための申請は昨年10月から始まっている.

 解説です
 制度導入が間近になっているにもかかわらず,最終的なサービスの単価が決まらないのは,長引く不況が大きく影響をしています.だから厚生労働省も単価を出せないでいるのです.
 福祉サービスを充実させるという目的で導入される支援費制度ですが,経費の削減だけが優先されるという結果になりそうな状況であり,非常に腹立たしい状況になっています.これまでの措置制度の方がよかった等といわれないような対応が必要ですが,そうはいかないようで,本当に困ってしまいます.
 どうすれば望ましい支援費制度になるのでしょうか.私たち一人ひとりが考えないと,サービスを受ける障害者本人は困ってしまいます.さまざまな団体を通じて要望が出ているようです.協力できる機会があれば積極的にと思います.

 厚生労働省のなかにある支援費制度に関するQ&Aです.
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/syakai/sienhi/qa.html
 
生きよう.広がる冊子
  (2002年12月29日 朝日新聞 朝刊)の記事を 1/8 にアップしました.

 「生きよう」.そんなタイトルで今年初めに作られたリーフレットが反響を呼んでいる.ある精神障害者の自殺をきっかけに,仲間約50人が自殺防止を願って文章を寄せた.自分が死にたくなったときのこと,死のうとしたときのこと,仲間を亡くしたときのこと…….「2度とこんな思いはさせたくない」との気持ちであふれている.

 作ったのは,精神障害者が集うグループ「ちょっとのぞこう会」(大阪府八尾市)の有志.昨年1月,メンバーの男性(当時32)が自殺で亡くなった.ギターが得意で,自作曲でバンド活動もしていた.その1ヶ月ほど前,カラオケで「奇跡の地球(ほし)」を歌う姿を,仲間はよく覚えている.
 拠点とする地域生活支援センター「ちのくらぶ」から突然の知らせが届いたのは,正月気分も抜け切らぬ同6日.会員の青木茂さん(35)は「あんなにがんばっていたのにって,ショックだった.みんなで『死になや,死になや』って声を掛け合った」と振り返る.
 衝撃は続いた.「わしも死のうとしたことある.あんときは誰にも止められへん」「精神障害者って自殺多いよなあ」
 話し合いが続くなか,ある会員は怒った.「こんなふうに死んで周りを苦しませていいんか.死んだらあかんのちゃうか」.「暗いことは思い出したくない」「今,自分も死にたい」という人もいた.
 議論の末,自殺をタブー視せずに語ろうと,文章を募った.「死にたくなったとき」「つらかったとき」「仲間をなくしたとき」「でも立ち直ったとき」の4つをテーマにした.

 (後略)

 解説です
 つらい体験を語り合うことの大切さについて,最近さまざまなところでいわれ始めています.そして,そのような活動をしているセルフヘルプグループ(自助グループ)の大切さについても注目されています.つい最近も,親を自殺で亡くした子どもたちの交流についてのグループができたことも話題になりました.

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