新聞記事から2002

ここでは、新聞記事から社会福祉に関係のあるものを選び、紹介・解説します。 

心の病に理解を 「社会的入院」減らしたい
 2004年10月1日追加説明
 以下の中国論壇の記事を紹介しましたが,最初の紹介文に「インタビュー記事である」と書いていました。中国論壇の記事は署名入りの文章ですから,明らかに間違いの紹介文でした。ここにお詫びし,訂正させていただきます。


 以下は,2002年12月24日にアップした内容です。

(2002年12月22日 中国新聞 朝刊より) 

 中国論壇
 「心の病に理解を 『社会的入院』減らしたい」齊藤富子「がんぼネット」編集委員

 広島県内の精神病の当事者で発足した「がんぼネット」の発行している通信が,今月で10号になりました.現在の会員は40人.年4回の通信発行のほか,毎月例会を開いて,お互いの病気や生活のことを話しています.
 私は,精神病とつきあって26年になります.その間,10数回入院しました.精神科の病院に入院してみて,私自身も誤解していたことに気がつきました.はたから見ていると,いわゆる「おかしい」人というのは,それほど多くはいないのです.
 病気の影響や長患いのせいで,痴呆のような症状が出たり,変な行動をしてしまう人がいるのは確かです.でも,多くの人はおとなしい人たちで,女性なら編み物やレース編みをしていたり,男性ならスポーツをしたり将棋,囲碁をして過ごしています.元気な患者は,職員の手伝いもしていました.
 だから,そんなこと1つをとっても,精神科や精神科や精神科病棟は,世間から間違ったイメージで見られてきたことが分かります.まだ病院や病気のことをよく知らなかった私は,「こんなに元気なら早く退院すれいい.外の方が楽しいし,仕事をすればお金も稼げるのに…」と思ったものです.
 「社会的入院」という言葉を知ったのは,それからしばらくたった後でした.精神病で入院して病気がよくなっても,引き取り手がなかったり,家に帰ることを拒否されたり,病気が悪くなくても長い間,社会と隔絶された精神病院に入院したため,社会生活が困難になって退院できない場合など,こうした入院の仕方が,社会的入院と呼ばれています.
 「社会復帰」や「社会訓練」が叫ばれている現在でも,そんな事情で余儀なく入院している患者が多くいます.私は入院をくり返す中で,「人格を持った人間が,病院という閉ざされた場所で,残りの人生を過ごしていいものなのか」との疑問に駆られました.一般社会がどんなに厳しくたって,楽しいことはいっぱいあります.第一,閉ざされた病院で一生を送るために生まれてきたわけではないのです.
 私の夫も,精神病を発症して約20年になります.夫は私と違って,この間に入院は2回しかありません.しかし,症状が良くなるまでの5年間,引きこもり状態に陥りました.現在は,パートの仕事をしていますが,よほどのことがない限り,仕事を休むことはありません.自分の経験から夫は,引きこもりで苦しんでいる精神病の人たちに,何かの支援ができないだろうかと考えてきました.
 患者会の仲間は,私たち夫婦のように,さまざまな思いを持っています.現在の医療や行政だけに自分たちのことを任せていても,なかなか進まないことにも気がつきました.結局は,自分のことは自分でやるしかありません.ささやかな活動ですが,社会の方々が少しでも関心を持っていただければ,どれほど心強いでしょうか.
 精神病は「現代病」とまで言われています.人ごとと思わないで,地域や家庭,教育の現場で正しく理解してほしいのです.悲しい体験をする人たちが1人でも少なくなる未来を願ってやみません.

 解説です
 全国的に,さまざまな病気などの当事者が発言をされるようになってきています.広島県でもいくつかの動きがあるようです.この記事で紹介されている「がんぼネット」は,比較的長い活動の実績がある会です.
 精神障害や精神病者に対する無理解からくるさまざまな偏見や差別を解消するためには,まず正しい知識を持ってもらうことが大切です.しかし,このように発言をすることで,つらい思いをされることもないとはいえません.
 それにもかかわらず,思いやりのある深い願いを伝えておられるのです.1つひとつの内容をかみしめて読む必要がありますね.
ヘルパーなど採用拡大 介護主要10社で5000人
 (2002年12月23日 日本経済新聞より)

 介護大手各社がホームヘルパーなどの介護スタッフの採用を拡大している.ニチイ学館が2003年3月までに2500人を新たに採用するなど,各社は10〜20%の増員を計画,人事確保を急いでいる.中高年男性が就業するケースも増えており,雇用環境が悪化するなか新しい雇用の受け皿となり始めている.
 在宅介護サービス最大手のニチイ学館や全国に約120拠点を持つツクイ(横浜市,津久井督六社長)など主要な10社でみると,少なくとも来春にかけ合計で5000人近くを新規採用する見込みだ.
 従来の介護サービスの担い手は20歳代や40歳−50歳代の女性が中心だったが,「最近ではメーカーやサービス業から転職してくる男性も見られるようになった」(ツクイの服部修二監査役).新卒なども「一般の大学や短大を卒業した人で介護業界への就職を希望する人が増えている」(大手のやさしい手)という.
 厚生労働省によると,訪問介護など在宅介護サービスの事業所で働く人は2001年10月時点で37万人超.要介護認定者数の増加に伴い,サービスを提供する人員は年1割程度のペースで伸びており,他業種からの人材流入も進んでいる.

 解説です
 長引く不況のあおりを受けて転職する人たち,中でも中高年の男性が介護業界に流入している.どうやら,かなり研究をして,最初はホームヘルパーなどの介護スタッフとして業界に入り,5年の経験があればとることが出来る介護支援専門員(ケアマネジャー)資格の取得をねらっている様子です.
 一般企業の仕事の厳しさと工夫のノウハウを持っている人たちが参入してくることにより,介護に関係する仕事の質が問われるようになってきたといえます.
 介護保険の導入で言われていた,多様な事業主体が参入してくることで,本当の意味での競争が起こってくるはずです. 
「支援費制度」来春から 自治体も障害者も手探り
 (2002年11月16日 朝日新聞 備後版より)
 今回は,備後版に多くのスペースを使った記事が載りました.長いですが,転記します.

 障害者福祉サービスを障害者自身が選択し,契約できるようにする「支援費制度」が来年4月から実施される.県内の一部の自治体ではすでに申請の受け付けが始まっているが,事業者に支払われる単価などについて未定の部分も多い.情報不足の中,障害者本人を含め,市町村担当者は手探りで準備を進めるほかないのが現状だ.

 来春の制度開始に向け,県内の各自治体は準備を始めているが,ここまでの足並みは必ずしもそろってはいない.
 県知的障害者福祉室の調べによると,県内86市町村のうち,10月中に申請の受け付けを始めたのが10市町村,11月中に予定しているのが26市町村にとどまっており,まだ半数以上の自治体では申請を受け付けていない.
 (中略)

 ●情報不足
 今月6日,福山市を中心とした知的障害者の子どもを持つ親のグループ「でんでんむしの会」(井門博・代表世話人)のメンバーらが同市障害福祉課の窓口を訪れた.
 「短期入所において,何らかの行政的な配慮はないのか」など,7項目の質問を文書で提出,同課に回答を求めた.
 井門さんは「当事者に正確な情報が早く伝わっていないと思う.厚生労働省のホームページなどで情報を入手しても,変更されることも多く戸惑うばかりだ」と話す.
 情報不足は当時者ばかりではない.政令指定都市・広島市や中核市・福山市は国から直接説明を受けるが,両市以外の市町村では,後で県から説明を聞くことになり,その分だけ遅れる.
 神辺町の担当者は「国の発表から,県の説明までに約1ヶ月かかることもある.ホームページでの情報収集もしているが,きちんとした情報が来るのが遅い」と話す.
 これについて県知的障害者福祉室は「資料の印刷だけでも2週間はかかる」と弁明している.

●今後変更も
 厚生労働省は9月,事業者に支払われるサービスの単価案を公表した.それによると,ホームヘルプで身体介護を受ける場合,30分未満が2110円,30分以上1時間未満が4030円などとなっている.
 ただ,これらは確定ではなく,今後変更される可能性もある.
 このため事業者にとって採算面での見通しが立ちにくく,現時点での申請を迷うケースが多いという.
 (後略)


解説です
 支援費に関しては,当初は介護保険と同様の制度が考えられていたようですが,不況や財政難との関係での変更点が出てきています.一番大きな点は,支援費の額が当初より低くなってしまうことではないでしょうか.
 また,介護保険ではその行為に対して費用支出があるケアマネジメントに関して,障害者を対象としたケアマネジメントでは,費用支出がないこともあります.ケアマネジメントを行うのは,各種相談機関ということになっています.
 厚生労働省が示す「障害者ケアガイドライン」では,次のようになっています.

 「障害者ケアマネジメントの実施主体は第一義的には市町村であり、市町村が自ら実施するか、あるいは都道府県及び市町村が委託している市町村障害者生活支援事業、障害児(者)地域療育等支援事業及び精神障害者地域生活支援センターにおける相談支援において、障害者ケアマネジメントを実施する。
 また、障害者ケアマネジメントは、都道府県が設置する福祉事務所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、保健所及び精神保健福祉センター等における相談業務においても、障害者ケアマネジメントを活用すべきである。」

 つまり,高齢者を対象とした介護保険で行われているケアマネジャーの仕事を費用支出をすることなく,上記の相談機関で行いなさいということです.

 日本の財政状況が厳しいだけに,費用削減を念頭に置かなければならないことは分かりますが,何とも困った状況になってきていますね.

 支援費制度やケアマネジメントに関することは,次のHPに詳しいです.ぜひ,ご覧ください.

 「障害者ケアガイドライン」のページ
 「支援費と利用者負担額」のページ
統合失調症新薬/服用の患者死亡 こん睡など13人副作用
 (2002年11月8日 日本経済新聞より)

 昨年2月に発売された統合失調症の新薬「セロクエル」(一般名・フマル酸クエチアピン)を服用した患者のうち,13人に血糖値が急上昇してこん睡するなどの副作用が相次ぎ,1人が死亡したことが7日分かった.厚生労働省は製造元のアストラゼネカ(大阪市)に対し,緊急安全性情報を出して医療機関に警告するよう指示した.
 (中略)
 同省は「血糖値の上昇と薬の服用との因果関係は否定できない」と判断.使用上の注意に,@糖尿病患者や既往歴のある人への投与を禁じる,A投与中は血糖値の測定など観察を十分に行う,B患者や家族に十分に説明する −などの内容を追加するよう指示した.
 セロクエルは「非定型」と呼ばれる統合失調症治療の新世代の薬として注目を集めている.脳内物質の作用を抑制し,特にこれまで治療が難しかった慢性的に気分がふさぎ込む症状に効果が高いとされている.同社が2000年12月に製造承認を受けて,藤沢薬品工業が販売.9月末時点で,約13万人が使用,110億円の販売実績がある.

 解説です
 この薬が開発されたことで,統合失調症の患者さんが社会でさまざまな活動をするときに障壁となっていた陰性症状(ここでは,慢性的に気分がふさぎ込む症状,と書かれている)が改善できるようになっています.そして,社会活動への参加ができるようにもなってきています.
 ただ,それほど薬が効かない人がいたり,今回のように副作用が起こったりするのも事実です.
 薬は一歩間違うと毒にもなりますから,やはり細心の注意が必要です.このことがきっかけとなって,せっかくのよい薬の恩恵を受けることができなくならないことを祈ります.

 そういえば,糖尿病の人にはよくないということが以前にも言われていたような記憶があるのですが,きちんとした対応ができていなかったのかしらん? などと思っています.もしそうなら,分かっていても対応ができていなかったことの方が問題ではないのかなあ,と思いますね.
足りない児童精神病院
 変わる精神医療(シリーズもの)の3回目です.少し長いですが,引用します.
 (2002年9月21日 朝日新聞より)
 
 父親の職場に学校から呼び出しの電話がかかったのは,中学生の子どもが心療内科を受診して3週間後のことだった.
 被害妄想.他人の視線にも恐怖を感じるようになった.医師は「統合失調症の初期の疑い」と診断した.そのことは担任らには伝えたが,「ほかの先生には内密に」と頼んだ.
 学校を訪れた父親に校長が言った.
 「今はお母さんだけに被害妄想が向けられているそうですが,将来,教員や生徒が対象になったらどうしてくれるのですか」
 両親の知らない間に,校長らは医師を訪問,医師は両親の同意を得ずに診断名や治療内容を教えていた.
 母親は,学校と医者の両方に裏切られたと感じた.学校の中で病名が独り歩きし,教師が腫れ物にさわるように子どもに接している様子が想像できた.母親は校長に手紙を書いた.
 「薬でもうろうとしているはずなのに,信頼する先生に会いに行くため,学ぶために,子どもは毎日登校しています.病気という色眼鏡で見ないで,真正面から受けとめて下さい.
 それから,10ヶ月.突然の過食,入院,一時帰宅,そして自殺未遂.子どもはいま再び病院にいる.
 1日に50錠もの薬.副作用なのか,手をぶるぶる震わせる姿に,病院への疑問がわいてくる.「診断は正しいのだろうか.治療は適切なのだろうか……」
 セカンドオピニオンを求めて母親は数少ない児童精神科の専門医を訪ね歩く.将来への不安も尽きない.両親とも肉体的にも精神的にも疲れている.
 いじめ,不登校,虐待,非行…….心に傷を負い,医療に助けを求める子どもが急増している.

 解説です
 このあと,新聞記事では国立精神・神経センター国府台病院の児童思春期外来の受診者が5倍になっていることと,それに対して専門の医師や病院の数が少ないことを取り上げています.
 しかし,私としては,違う視点からの問題を感じます.
 それは,学校の対応のまずさです.中学校ですからスクールカウンセラーが配置されているはずです.当然,養護教諭もいます.それにもかかわらず,記事のような結果になっているのです.つまり,子どもの精神保健に対する無理解と偏見を感じるのです.
 そして,この記事には福祉的な視点が書かれていないことも気になります.学校に(あるいは学校と関係を持っている)社会福祉の専門家がいないからなのでしょうが,新聞記事ですからそのようなことの必要性についても書いてほしかったですね.

 現在,精神保健福祉はまだまだ十分な対応をしていません.ようやく始まったばかりです.福祉としての関わりが求められます.それも,精神保健福祉と学校ソーシャルワークとを結びつけるようなシステムがひつようですね.
学生無年金障害者救済へ 厚労相意向 月4万円支給案 
 坂口厚生労働省相は27日,国民年金が一部任意加入だった時代に未加入のまま障害を負い,障害基礎年金を受けられなくなった「無年金障害者」のうち,当面,学生だった人に限り,救済する意向を固めた.現在の障害基礎年金の給付水準の半額程度を,税を財源に支給する考えだ.
 無年金障害者は,約10万人と推定され,障害を負った当時,任意加入だったた主婦や学生,国籍要件のため加入できなかった在日外国人,強制加入の対象だが,未加入だったか保険料を納めていなかった人に大別できる.厚労相はこのうち,「学生は他の人と比べ,働いて収入を得る能力が乏しく,保険料を支払うことが難しかった」と判断,救済を急ぐことにした.
 病気や事故で障害を負った際に支給される基礎年金は,障害の程度によって月額で月6万7千円〜8万4千円.厚労相はこの半額を支給するのが適当としている.学生無年金障害者は約4千人という推計もあり,一定以上の所得がある人を支給対象から除くと,年間で十数億円の予算が必要になる.
 今後,社会保障費の抑制を促す財務当局との交渉は難航しそうだが,厚労相が方針を固めたことで,救済に道筋がつけられそうだ.
 無年金障害者をめぐっては,社会保険審査会が昨年4月,全国の学生無年金障害者が障害基礎年金の支給を求めた再審査請求を棄却.昨年月には,全国各地で国を相手に取り,障害基礎年金の支払いを求める訴訟が起こされ,現在30人が係争中だ.
 国民年金が強制加入になったのは,20歳以上の学生が91年,専業主婦が86年,在日外国人が82年からだ.
 朝日新聞 2002年7月28日(日)朝刊より

 解説です
 長年問題となっていた,無年金障害者を救済する方法に光が見えました.制度的に無年金の人を作り出したのは,国にその責任があることがいわれています.そのことを考えると,今回の対応は適切なことではないでしょうか.
 私の知っている精神障害者当事者の方もいます.年金がもらえないために,本人だけではなく家族も非常に無理をした生活をされています.ようやく,必要なことが実現したということです.
 しかし,記事にもあるように,財政的な問題は大きく,社会福祉全体の問題として存在します.
まだ案の段階ですが,実現することを期待します.

 無年金障害者の会がHPを立ち上げています.URLは,次の通りです.
   http://www7.plala.or.jp/munenkin/


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