新聞記事から2000

ここでは、新聞記事から社会福祉に関係のあるものを選び、紹介・解説します。 

朝倉病院事件の背景/手薄さ容認の特例/廃止後も残る格差(2000年12月28日 朝日新聞)

 医師ではないスタッフが患者を選んで必要性が認められない静脈栄養を施したり、医師の指示もないまま患者の手足を縛るなどの拘束が日常化していたり。埼玉県庄和町の朝倉病院で明らかになった人権無視の医療を招いた原因のひとつは人手不足だ。その背景には、精神科は一般診療科と比べて、手薄でかまわないという「精神科特例」がある。
 (省略)
 精神科の病院は、外科や内科などと比べ、医師数は3分の1、看護婦数は3分の2でいい。医療法上の特例だが、朝倉病院の場合、この特例の基準すら満たしていなかった。
 厚生省によると、全国約1200の精神病院のうち、看護婦の基準を満たしていない病院が4.4%、医師の基準を満たしていない病院が29%もある。
 「精神科特例」は、1958年の厚生省事務次官通知に基づいている。国会でも精神病院の人員配置基準を引き上げるよう付帯決議がつけられるなど、批判されてきた。来春施行の改正医療法に合わせて、約40年ぶりに廃止されることとなった。
 新しい基準について議論した厚生省公衆衛生審議会の専門委員会の報告書は、大学病院や総合病院の精神科については、一般病院と同じ水準で、医師は「入院患者16人に1人」、看護婦は「3人に1人」としている。
 しかし、それ以外の民間の単科精神病院などについては、医師は現行通り「48人に1人」のままで、看護婦は「6人に1人」から「4人に1人」に引き上げるにとどまった。依然、一般病院との格差が残っている。
 しかも、この報告書を受けて厚生省が示した省令案では、民間の単科精神病院などは5年間の経過措置のあとも、「当分の間」は看護婦は「5人に1人」でよく、資格のない看護補助者を含めて「4人に1人」で良いことになっている。
 (中略)
 また、今回、都道府県が実施する監査の不十分さも明らかになった。
 民主党の朝倉病院問題調査チームのヒアリングに対して、埼玉県は「医療監視もしているが、罰則規定がない」と答えた。来年3月の改正医療法施行で、人員が基準の2分の1以下の状態が2年間続いたとき、増員を命令できるようになる。それ以上であれば、基準を満たさなくとも、指導されるだけだ。

解説です
 この、「新聞記事から2000」の最初に、この件に関して検討されているという情報を載せました。そして、そのことについて正式に決定した内容を紹介することになりました。
 このことだけでなく、学校のクラスにしても、特別養護老人ホームの職員基準にしても、日本という国では人を大切にしないことが指摘できます。そして、それは仕方がないという気持ちにさせられてしまいます。しかし、ここであきらめてはいけません。どうして、このような基準なのかをきちんと追求する必要があります。「人が足りないとか、人が足りないからこうなるのは仕方がないのだ。」というのは、理由になりません。人が足りなければ、増やす努力や工夫をすればよいでしょう。また、人手が少ないから仕方ないというのも単なる言い訳に聞こえます。本当に、人手が少ないことが明白であり、そのことが原因で適切なことができないのであれば改善することができるからです。
 恐ろしいのは、精神障害者やその他社会的弱者を差別し、そのことは仕方ないのだということにすることがこれまでも行われてきているということです。また、自分自身の反省も込めて、このような事態に対して、社会福祉関係者が直視し、取り組んでこなかったということです。犯罪被害についても、医療過誤についても、社会福祉関係者はどうしてもっと発言しないのでしょうか。ソーシャルワークの専門性を考えると、まだまだしなくてはいけないことがあると思うのです。


病室内で外科手術 埼玉の精神病院 3人、術後に死亡(2000年12月3日 朝日新聞)
 埼玉県庄和町の朝倉病院(朝倉重延院長)で緊急の必要性がないのに、他の患者がいる病室で3件の外科手術を行っていたことが1日わかった。手術を院内のどこで行うかについては法的な規定はないが、事実を確認した埼玉県は「衛生状態にも問題があり、好ましくない」として、病室では2度と手術しないよう指導した。さらに同病院は入院した患者を違法にベッドに縛りつけるなどしていたとされ、県が改善命令を出した。
 朝倉病院は精神病床が230、一般病床が12の計242床ある。入院患者のほとんどが痴呆やアルツハイマーなどの症状がある高齢者という。
 県によると、手術が行われたのは、症状の重い患者が入院していた精神病棟の病室で、高齢者の患者計3人に対して乳がんや大腸がんなどの手術が行われた。大腸がんの手術を受けた男性患者が手術の数日後に死亡したのをはじめ、3人はいずれも手術後に死亡したが、手術との因果関係はわからない、という。
 関係者によると、手術3件のうち2件は昨年、もう1件はそれ以前に行われた。部屋には患者が数人おり、カーテンや間仕切りなど、手術の様子が見えないようにするための配慮はなかった。
 県は11月10日、朝倉病院に対して立入検査を実施。その際、手術について朝倉院長に問いただしたところ、朝倉院長は「3例実施した」と認めた。県は、手術については緊急性はなかった、としており、こうした手術を2度と行わないよう指導した。
 一方、県の改善命令は精神保健福祉法に基づく措置。11月の立入検査で、
1)精神保健指定医の指示がないのに患者の手首をベッドに縛り付けて拘束していた。
2)4−6人の患者が入院している計6つの病室に夜かぎをかけて隔離していた。
3)任意入院している患者に自由に外出できると知らせていなかった。
−などの点を確認し、違反しているとして改善命令をだした。
 朝倉病院は精神保健指定医の前院長が5月末で退職して以降、常勤の指定医がいなかった。
 朝倉病院は病室での手術について朝日新聞のの取材に対し、「答えられない」としている。違法な身体拘束などについては、「前院長時代のことであり、管理者及び事務長に調査を依頼した」と回答した。

 解説です
 またもや精神病院での問題が発覚した。「精神障害者の人権に関する情報」でも紹介していますが、精神病院においては患者の人権を侵害するような事件があり、なくなることがありません。医療は、医師と患者との信頼関係に基づくことがその前提にありますが、どうやらそれがなかったのではないでしょうか。当然ですが、精神病院の多くは患者との信頼関係を作るために努力し、より開放的な環境を提供しています。しかし、この記事にあるような病院があることも事実です。
 患者やその家族は精神病院に関する情報をそれほど詳しく手に入れることができません。つまり、「当たりはずれ」があるのです。精神病院に関する情報が積極的に公開され、安心して治療を受けることができるような方法を確立する必要があります。そのためには、この下にあるような取り組みを行っていくことがますます求められます。


「笑顔」基準に精神病院選び(2000年11月9日 朝日新聞)
 入院患者が外部と自由に連絡がと取れるか、病室に威圧感はないか――。精神病院の閉鎖性が問われる中で、精神病院を訪ね歩き、患者らの処遇を調べ続ける入院経験者の団体がある。利用者の病院選びにも役立てたいと始めた。公衆電話の位置、窓の鉄格子など細かい点をチェックし、病院側に改善を求める。声が生かされる例も増え始めた。「変わろうとしている病院と、そうでない病院の差が開いている。それは患者の表情に表れます」。団体のメンバーはそう話す。病院訪問に同行した。
 元患者らが訪問/改善策を提案
 NPO法人「大阪精神医療人権センター」は1985年に発足、2年前から病院訪問に乗り出した。きっかけは、患者の違法な隔離や暴行などが指摘され、解決許可が取り消された大和川病院(大阪府柏原市)事件だった。入院経験者や精神科に通院中の人、看護婦ら32人が交替で訪ねる。
 この日は、山本深雪事務局長ら5人が大阪府南部の病院を訪ねるのに同行した。
 約400人が入院し、平均入院日数は約350日。1部屋にベッドが6つあり、ホールでは患者らが将棋を指したり、テレビを見たりしていた。
 入院患者はに通信の自由はあるか、外出はできるか、快適な居住空間か、医師と意志疎通はできているか――。5人は病室やホールで患者と話をしながら、こうした点に気を配る。
 山本さんは2年前にもこの病院を訪問した。その時は病棟の公衆電話が、看護婦らの詰め所の中に半分入った形だったため、「患者が電話を自由に安心して使えるよう、通話が看護婦らに聞こえないようにしてほしい」と申し入れていた。今回訪ねると、電話は詰め所から離してあった。
 訪問が終わり、病院理事らと話し合う。
 「公衆電話を使う患者をあまり見かけませんでしたが」
 「電話カードは、患者に自由に持たせています」
 「任意入院の患者は3人ほどそろえば買い物などに外出できることになっているそうですが、任意入院なら一人でも出かけてもいいのではないですか」
 「それはすぐ改善できると思う」
 病院事務長は「病院内を外部の目に見てもらうことで、質の向上に役立てたい」と話す。
 別の病院では、患者用の売店設備や病室の窓の鉄格子撤去を求めたら、実現した。「もっと、ひんぱんに来て患者の話を聞いて欲しい」という病院もあった。

 解説です
 精神病院は閉鎖的であるというイメージが非常に強いという事実がある。しかし、実際には、精神病院を開放的にして、本当の姿を理解して欲しいという動きも出てきています。また、一方では精神病院では患者の人権侵害につながる閉鎖的な病棟、患者の自由を制限する対応などが根強く存在します。
 精神病院の対応をより開放的に、より居心地の良い環境にするためにさまざまな取り組みが始まっています。
 ここで紹介している取り組みは、全国的にも先進的な取り組みとして注目を集めています。実際に、大阪府下の精神病院を訪問して、その結果を報告書として発行されています。このような取り組みが全国的に始まり、精神病院がより良い環境になることが求められています。
 記事にもありますが、このような取り組みに対して、協力的かそれとも拒否的かによって、その病院の意識が分かるというメリットがあります。


障害者の就労支援拡大 ジョブコーチ、職場で手助け(2000年10月31日 日本経済新聞)
 精神障害者や知的障害者の就労を後押しするため、障害者と一緒に職場に入り、一人で仕事ができるまで付き添う「ジョブコーチ」が広がり始めている。作業から同僚とのつき合い方まで幅広く手助けし、職場に定着できる環境づくりを進める役割。先行してコーチの派遣に取り組む民間団体は「職場の理解が進んで一人ひとりの能力を引き出せるようになる」と強調する。労働省も人材育成を目指して今秋から試験事業を始めており、今後、制度面の整備に弾みがつきそうだ。
 (中略)
 福祉現場でのコーチの広がりに呼応して、労働省は今年度からジョブコーチの制度化を目指し、滋賀、神奈川両県で2年間の試験事業を始めた。今後、有識者の意見も参考に実施計画をつくり、2002年度にも全国で展開する方針だ。
 ジョブコーチ
 重度障害者の就労を支援するため、継続的に職場に派遣される指導員。就職後の通勤や仕事、同僚ら周囲との関係づくりなどを支援し、障害者と企業との間のトラブルを防ぐ役割を担う。1980年代に米国で生まれ、同国では公的な「援助付き雇用制度」として普及している。
 日本では主に精神、知的障害者の就労支援として注目され、労働省の外郭団体「日本障害者雇用促進協会」の設置する障害者職業センターが「生活支援パートナー」などの名称で派遣しているが、いまのところ本格的な就労の支援というより、「援助付き職業訓練」という性格が強い。

 解説です
 障害者の社会復帰を考えるときに、授産施設や共同作業所を利用することが多いのですが、当事者の希望として一般的な職場での就労を希望する声は大きい。授産施設や共同作業所、福祉工場を利用している当事者の気持ちの中には、まだ社会復帰をしていないと考えていることがあります。
 そのような人には、ここで紹介するジョブコーチを利用して、一般就労を目指すことが考えられます。しかし、このような取り組みは、まだまだ一部のことです。


「欠格条項」廃止へ 厚生省 医師、看護婦など6種類(2000年10月31日 朝日新聞)
 心や体の障害を理由に医師、看護婦などの免許取得を制限している関係法令の「欠格事項」について、厚生省医療関係者審議会の検討小委員会は30日、聴覚、視覚などの障害を特定して免許を与えないとする条項を廃止する方針をとりまとめた。
 厚生省は、11月中に開く同審議会の部会審議を経て、法令の改正作業に着手する。遅くとも2002年度中に改正し、障害を持つ人を一律に排除していた資格の門戸を開く。
 同委員会の検討対象は医師、歯科医師、看護婦、保健婦、准看護婦、助産婦の6種類。今回のとりまとめを受け、同審議会に関連する臨床検査技師、理学療法士など16種類の欠格条項も見直される見通し。
 現在の制度では、「目が見えない」「耳が聞こえない」「口がきけない」人は医師などの免許資格のないことが関係法令に定められている。見直しでは、条項からこれらの文言を削除し、障害で一律に欠格とするのではなく、「業務に支障がある」場合などに限定する。点字や手話通訳などの補助があれば医療行為ができる可能性のあることに着目した形だ。
 総理府の調査では、国には現在、57制度に欠格条項があり、厚生省所管が29を占めている。このうち、薬剤師、毒物劇薬取扱責任者などの欠格条項も、今年の中の方針決定に向けて検討を進めている。

 解説です
 障害を理由に、一律に免許を取ることができない(絶対欠格)条項が見直され、廃止されることになったのは当事者や関係者の活動の成果です。非常に良いことです。しかし、記事の中にもありますが、「業務に支障がある」場合に限定する(相対欠格)に関する条項はそのままのようです。さまざまな議論がされているでしょうが、「業務に支障がある」かどうかをどのように考え、点字や手話通訳などの補助があれば良いという判断をどのようにするのかが非常に重要となります。


暮らしに近い介護作ろう −ユニットケアセミナー 岡山で−
 高齢者施設を「より家庭的な場所」に変える手段として注目されているユニットケア。そのあり方を考え、実践を広げようという「特養・老健ユニットケア全国セミナー」が倉敷市で開かれる。昨年福島で開かれたのに続き2回目。
 ユニットケアは、特別養護老人ホームや老人保健施設など、これまで50人以上の集団生活・流れ作業的ケアの場だった施設を、10〜10数人のいくつかのユニット(生活単位)に分け、暮らしの場に近づける試みだ。職員と高齢者の距離を縮め、「顔なじみ」の関係を築き、ケアの質を向上させることを目指す。
 実態は調査中だが、全国で50〜60カ所に広がり、病院でも取り入れるところがでている。特養・老健ユニットケア研究会代表は、「ユニットケアは、単に施設を分けて規模を小さくすることではなく、生活をともにするケア、施設を暮らしの場に変える一つの手段。施設のケアを向上させるために知恵を出し合いたい」と話す。

 解説です
 偶然ですが、「ひとりごとpart4」に書いた内容が新聞の記事として載っていました。内容としては、重複するので解説は省略します。
 良ければ、「ひとりごと2000」をご覧下さい。 


患者・家族会の連絡先網羅 (2000/09/21 朝日新聞)
 病気になったとき、本当に親身になって相談に乗ってくれるのは医療機関より先輩患者かも知れない。
 このほど出版された『病気になった時すぐに役立つ相談窓口・患者会1000』は患者や家族の自助グループ約千団体のプロフィールや連絡先を病名別に網羅している。

 解説です
 同じ悩みを抱える人達が互いに支え合い、協力をする会として「自助グループ」はあります。同じ患者としての苦しみや、思いを発言しできる場です。そして、同じ思いを持っているからこそできる助言もあります。また、支え合うということもできます。
 私が関わっている「びんご・生と死を考える会」も同じような主旨をもって結成されています。記事の内容にもありますが、きっかけはアルコール依存の患者団体です。同様に、薬物依存の人が集まる会や精神障害者の自助グループもあります。
 知的障害者の親の会としては「日本手をつなぐ育成会」、痴呆性老人を家族に抱える家族の会「ぼけ老人をかかえる家族の会(2007年1月28日現在「認知症なんでもサイト」)」などもあります。


高齢者の金銭管理や福祉利用手続き
 「社協が代行」進まず
 (2000/05/18 朝日新聞)
 判断能力が不十分な高齢者や障害者のために、金銭や預貯金通帳を管理したり、福祉サービス利用を支援したりする地域福祉権利擁護事業が思うような成果をあげていない。介護保険制度のスタートをにらんで全国の社会福祉協議会が始めたが、朝日新聞社の調べでは、今年3月末までの利用者は神奈川、大阪を中心に全国で340人にとどまり、利用者ゼロの都道府県が全体の4割以上を占める。事業内容が知られていないことや有料であること、などが課題になっている。
 注:地域福祉権利擁護事業
 判断能力が不十分な高齢者、知的障害者、精神障害者などが対象となる。原則として、施設に入所している人や身体障害者は対象外。事業内容は、
1)福祉サービスの利用援助
2)日常的金銭管理サービス
3)書類などの預かりサービス
 利用者と社協が契約をし、利用者は利用料を払う。生活保護世帯の場合は利用料は公費負担となる。
 福山市における地域福祉権利擁護事業については、「ふく・ふくサービス(仮称) 地域福祉権利擁護モデル事業」として紹介しています。

 解説です
 高齢者や障害者の権利擁護を考えた事業としてスタートしたが、早くも大きな壁にあたったということです。成年後見制度との関係も深く、利用者(高齢者・障害者)の側に立った制度として期待されている制度です。しかし、この制度の利用が必要な人が、自ら制度を利用したいと申し出ることはほとんどなく、現実的には援助をする家族が申請することになる。そのため、家族にとってそれほどメリットがないかぎり利用されることがないという心配が本当のことととなったようです。
 自分自身が意識もしっかりしているときに、この制度を使うことを希望していることがはっきりしていても実際には利用されるかどうか疑問です。実際にこの制度の対象となるときには、判断能力が本当にないのかということをはっきりさせないといけない。しかし、そのような状態の時に、本人の立場に立って申請ができるのかということになります。
 運用について、今後も検討され、利用者本位の制度とする工夫が必要なようです。


介護報酬 悪質業者に返還請求
 不正請求や劣悪なサービス/資格取り消しも/厚生省が監査指針
 (2000/05/18 日本経済新聞)
 厚生省は介護保険のもとでサービスを提供する事業者の監査指針をまとめ、各都道府県に通知した。悪質な事業者を厳しく取り締まることで、介護サービスの質の向上を促すのが狙いで、保険から支払われる介護報酬の不正請求や劣悪なサービスの提供が発覚した場合は事業の参入資格を取り消す。問題のある事業者には原則として過去5年間にさかのぼり介護報酬の返還を請求することも都道府県に促し、制度の浸透をめざす。
 全国で十数万にのぼる介護事業者の一部について、利用者からサービス内容などの苦情が自治体に寄せられている。介護保険ではサービス事業者の参入資格を認定する都道府県に、事業者を監査する権限が与えられている。厚生省は、「サービスの質に地域的なばらつきが生じると利用者の不信を招きかねない」と判断、監査の手法について全国共通の指針を作成した。
 指針では、監査の対象になるのは、
1)劣悪なサービス提供の疑い
2)介護報酬の不正請求の疑い
3)法律による職員の配置基準の違反
4)是正指導に従わない
5)指導の拒否
のいずれかに該当する事業者。都道府県は監査結果を踏まえ、悪質な事業者の参入資格を取り消す処分のほか、施設管理の変更や設備の使用制限を命じるべきだとしている。
 さらに劣悪なサービスの提供と介護報酬の不正請求に対しては、過去5年間にさかのぼって介護報酬の返還を事業者に請求するよう求めている。
 厚生省は劣悪なサービスの例として、正当な理由もなく高齢者をベッドに縛り付けたり、高齢者に入浴させない、排せつの介助をしないなどのケースを想定している。介護報酬の不正請求では、実在しない職員の分まで報酬を請求するといった例を挙げている。(のこり省略)

 解説です
 ついにというか、やはりというか、介護保険に関しての劣悪なサービスや不正請求に対する監査指針がでた。上記にあるような例は、実際に寄せられた苦情をもとに対策として作られているでしょうから、そのようなことを実際にする事業者が存在するということになります。
 私はかねてから、社会福祉の分野に一般企業が参入するときに心配なこととして、利益の確保を優先して、利用者にとっての最善を考えたサービス提供がなされない可能性をあげてました。一般企業が参入するからといっても、介護サービスはあくまでも社会福祉制度の枠の中に位置づけられ、サービスの提供には、社会福祉の理念や倫理といったものが必要不可欠です。(といっても、社会福祉法人の事件がありますが。)
 このような状況を事前にチェックする機能として福祉オンブズマン制度というものがあります。厚生省も、介護保険の中に位置づけるようです。しかし、実際の運営に関しては、日本の組織の特徴として身内で行おうという傾向があります。福祉オンブズマン制度は、本来なら第3者機関が行うべきものです。それを、施設長が中心となって行っても自ずと限界があります。
 利用者の権利擁護を第一に考え、介護保健サービスが提供されるシステムを作り上げなくてはなりません。


精神病院 身体拘束・隔離1万4000人
 厚生省研究班 全国調査 実態明らかに
 (2000/04/26 朝日新聞)
 精神病院で腕や体を縛られたり、隔離されている患者は全国で約1万4千人と推計されることが25日、厚生省の研究班の調査でわかった。行動制限の実態が明らかになったのは初めて。全国の精神病院を調査したところ、約7割の病院から回答があり、約1万人が身体拘束や隔離などの行動制限を受けていた。4分の1が痴呆性の患者で、残りが精神分裂病など精神疾患の患者だった。1ヶ月以上行動制限を受けている患者も約千2百人いた。主任研究員の浅井邦彦・浅井病院院長は「外国に比べ、長期間行動制限を受ける患者が多い。制限が安易に行われていないか点検する必要がある」としている。
 調査は、2年前に新潟県の国立療養所犀潟病院で体を縛られた患者が、吐いたものをのどに詰まらせて死んだことを受けて実施された。全国の1548の精神病院に、昨年6月末時点での行動制限の実態を尋ね、1090病院から回答があった。
 それによると、行動制限を受けていた患者は1055人。病床数に占める割合は、4.1%。病院区別では公立病院が7.6%と最も高く、国立病院・療養所が6%、総合病院が4.6%、日本精神病院協会所属の民間病院が3.8%だった。公立病院などに重症の患者が多いとみられる。
 痴呆性の患者が受けている制限の9割は身体拘束で、転倒などの防止のためが63%、点滴など医療行為のためが22%、身体拘束の4割は車いすに固定するものであった。精神疾患の患者の行動制限は3割が身体拘束で、7割近くが隔離。隔離の理由は9割以上が精神症状を挙げている。
 また、1ヶ月以上の行動制限は、痴呆症患者の隔離22例、身体拘束250例、精神疾患の患者の隔離607例、身体拘束261例など1200例近くにのぼった。

 解説です
 精神病患者の行動制限については、患者の人権擁護やオンブズマン制度との関係で常に問題となります。しかし、これまでその実態は把握されることなく経過してきました。
 急性期の精神症状が激しく、隔離または身体拘束を行わないと患者の安全を守れないという事実がありますが、必要以上の隔離・身体拘束は、患者の人権を侵害するものです。ただし、どのような状態であれば隔離・身体拘束が必要とされるのかについての判断基準や第三者機関による判断の体制はできていません。入院患者の権利を守る具体的な方法を考えなくてはいけないのですが、現状はなかなか進展しません。


社会福祉事業 利用者選択制を導入
 8法改正案閣議決定 利用者擁護盛る
 (2000/03/04 朝日新聞)
 政府は3日、障害がある人など福祉サービスを受ける人が、自分で施設やサービス提供業者を選べるようにする利用者選択制度の導入を柱とした、社会福祉事業法など8つの法律の改正案を閣議決定した。併せて、利用者の利益を保護するための権利擁護や苦情解決の仕組み、情報開示の義務化ののほか、社会福祉法人の設立要件の緩和なども盛り込まれている。戦後まもなくできた社会福祉事業の枠組みをほぼ半世紀ぶりに替えるものだ。同日にも国会に提出する。
 国会を通れば4月から施行し、利用者の選択制については、2003年4月から実施される予定だ。社会福祉事業法は、社会福祉法と改正される。
 改正の最も大きな柱は、これまでの「措置制度」を改める点にある。従来は行政側が障害者らの入所する施設や受ける福祉サービスの内容を決めていた。
 4月から介護保険制度が始まり、利用者が自分でサービス内容を選び、自分でサービス提供者と契約するようになる。この考え方を、障害者福祉の分野にも広げた。3年間の準備期間をもって、「選択制度」に移行する。
 対象は身体障害者、知的障害者、障害児が利用する更生施設や授産施設、ホームヘルパーの派遣などの居宅生活支援事業、デイサービス事業など。利用者は、自分で選んだ事業者に直接申し込み、費用は支払い能力に応じて一部を負担する。残りは市町村が「支援費」として助成する。
 利用者保護のため、痴ほうの高齢者など自己決定能力が低下した人でも福祉サービスを利用できるように支援する権利擁護制度の実施や、事業者として利用者からの苦情の解決に努める義務などが明記された。
 都道府県社会福祉協議会に、苦情解決のための運営適正化委員会を設置することとしている。
 利用契約についての説明や書面交付も義務とし、誇大広告は禁止した。事業者はサービスの質の向上に努めなくてはならないことも法律で初めて規定する。
 (のこりは省略)

 解説です
 これは、社会福祉の分野ではすでに議論され、検討も加えられていた「社会福祉事業法等の一部改正 社会福祉基礎構造改革」の法案が閣議で決定され、国会に提出されたという記事です。以前より、2000年4月からの実施に向けて動いていました。
 これからは、利用者自身が社会福祉のサービスを選ぶことになるのです。しかし、社会福祉のサービスに関しては、これまで措置制度の中にあったため、サービスに関する情報が公開されていなかったのです。また、利用する人は高齢であったり、障害があることで情報へのアクセス(情報利用)ができにくい人たちでした。このため、法律が変わって、利用者とサービス提供者との契約になるといっても、さまざまな問題があります。
 ポイントは、1)情報公開がきちんとされるかどうか、2)選ぶだけのサービスが用意されるかどうか、3)利用者の権利が擁護されるか
の3点にまとめられます。
 つまり、社会福祉のサービスを利用するときに、どのようなサービスがあるのか、そのサービスの質はどうなっているのか、サービスを利用するにはいくらかかるのか、サービスを提供してくれる人はどのような人なのかが重要になってきます。契約ですから、気に入らなければ解約したり、業者を替えたりすることができます。
 しかし、利用者は本当にサービスの種類や内容をきちんと理解し、選ぶことができるのでしょうか。そのためには、利用者が複雑な社会福祉のサービスの体系を理解し、選択し、契約しなくてはなりません。当然、利用者も努力する必要があるでしょう。それ以外にも、権利擁護事業のように、利用者の権利を守る手だてを考え、できるような仕組み(システム)を作らないといけません。


精神病床 医師・看護人「増員を」
 (2000/01/19 朝日新聞)
 精神病院や精神医療のあり方などについて検討している厚生省の公衆衛生審議会精神保健福祉部会(部会長=高橋清久/国立精神・神経センター総長)が17日、精神障害者が入院する病床(精神病床)の医師や看護職員の人員配置基準は一般の患者が入院する病床(一般病床)と同等の水準とするべきだという意見書をまとめた。厚生省が精神病床と一般病床を同等の基準にするべきだという考えを示すのは初めて。精神病院は現在、一般の病床と比べると、医師の数は3分の1、看護職員は3分の2でいいことになっており、質の高い医療を提供するためには改善が必要との声が相次いでいた。
 現行の医療法では、精神病床は特例として、一般病床とは別の人員配置が定められている。医師は、患者48人に1人、看護職員は患者6人に1人を配置することになっている。精神病床は、医師が16人に1人、看護職員が4人に1人という一般病床に比べて療養環境が悪いと言われてきた。

 解説です
 1月20日には、これ以外にも、2000年度の医療改革を審議している医療保健福祉審議会の医療改革の案が出たりしています。そこでは、患者4人に対して看護職員1名という現行の制度を、患者3人に対して看護職1名にするという案もあります。その趣旨は、患者にふさわしい医療サービスの提供をすると言うことです。
 先の新聞記事にあったように、精神病床においては、「精神病床特例」として低い基準が適用されてきていました。近年、精神科においては、陰性症状への対応として、さまざまなリハビリテーションが行われるようになっています。その際に、看護職員の数が少ないと、当然ですが適切なことが行えないという状況が出てきます。精神障害者の社会復帰を進めるためにも、この案が通ることを願います。

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