障害者の社会生活支援のニーズと
対応に関する研究
福山平成大学障害者福祉研究会          
上田 征三 ・ 長崎 和則 ・ 長岡 道代 

 テーマ  「障害者の社会生活支援のニーズと対応に関する研究」
   福山平成大学障害者福祉研究会
     上田 征三(福山平成大学 経営学部 経営福祉学科)
     長崎 和則(福山平成大学 経営学部 経営福祉学科)
     長岡 道代(福山平成大学 経営学部 経営福祉学科)

T、研究の目的
 障害者の中でも、知的障害者や精神障害者の社会生活を支援していくときに問題となることのひとつに、障害者本人と支援をする周囲の人とのニーズの違い、ニーズの認識のズレがある。
 これまで、知的障害者や精神障害者に関しては、本人が自分のニーズを積極的に表明するということが少なかった。表明されることがあっても、障害者本人の意見は重視されることがなかったり、軽く扱われてきた。それは、知的障害や精神障害の特徴とも関係している。障害があるために、自分の状況をうまく言葉にして説明できなかったり、説明するときに論理的に、あるいは系統的に説明できないことがあるからである。
 また、障害に関する周囲の人の誤解や無理解から、障害者本人の意見を積極的に聞いていこうという取り組みもされてこなかった。そのため、障害者本人に焦点を当て、障害者本人の視点から見て、障害者本人の生活に必要な社会資源の開発や制度の整備が図られることがなかった。そして、障害者を支援する家族やその他援助者の視点から見て、必要であると捉えられたことが規準となり、施設・制度の整備が進められてきている。
 障害があるとはいえ、 実際に生活をして、不都合や困難を感じているのは、当事者である障害者本人である。その当事者本人の意見や思いに素直に耳を傾ける必要があるのではないだろうか。
 当研究では、上記のように、障害者自身が社会生活を送る上でのニーズについて調査を実施する。その際には、障害者自身に焦点を当て、障害者自身の社会生活を支援するためのシステム作りを構築することを目指す。
 障害者プランの策定が全国的に進んでいるが、福山市では、障害者の社会生活支援を考えていく取り組みに関する研究はまだ具体的に実施されていない。
 なお、本研究は、福山市社会福祉協議会の協力を得てニーズ調査を実施し、障害者の地域生活を支援するための取り組みの基礎としたい。

U、研究方法
 研究方法としては、知的障害者・精神障害者自身と障害者を支援する人々が必要とする社会生活上のニーズを調査する。また、それらの障害者を支援する家族、その他の援助者やボランティアにもニーズ調査を実施し、実際に出てきたニーズの比較をする。また、それらのニーズへの対応(対人的な対応、制度的な対応の双方)がどのように整備されて来たのかや今後対応していくのかを確認していく。
 調査対象地区は、広島県福山市とする。対象者は、福山市内に設置されている障害者の施設(法外施設も含む)の利用者とその家族、利用している施設の職員・ボランティア等の支援者、また、施設を利用していない在宅の障害者とその家族とする。

 1、障害者自身のニーズ調査
 今回の調査では、障害者自身を調査の対象としていることが特徴である。そのため、調査を実施する際には、いくつか注意すべき点がある。一番重要な点は、障害者自身の本音をくみ取ることである。しかし、障害者自身のニーズ調査はこれまであまり行われたことがなく、その方法も確立されていない。特に、知的障害者に関しては、調査を実施する際に注意が必要である。コミュニケーションの能力が十分なく、援助者の補助や協力が必要な場合には、なかなか障害者本人の意見が聞き出せない。そこで、本調査に先立ち、関係者に対してニーズ調査に関する事前説明を行う。また、予備調査を実施し、本調査において障害者自身の声ができるだけありのまま聞けるような工夫をしていきたい。
 施設を利用している場合には、援助者との利害関係がどうしても存在する。また、在宅でも、家族との利害関係がある。そのような場合には、障害者といえども援助者に対して遠慮をしたり、顔色をうかがったりする。そして、 援助者に気に入られる表現をしたり、本当には思っていないことをお世辞のように表現することがある。そうすると、障害者自身が生活していく上で必要なニーズがありのまま出てこないことになる。
 以上のようなことを考慮に入れ、今回、調査を実施するにあたって、調査用紙による方法だけでなく、面接による聞き取り調査を実施する。そして、その際には、障害者自身と利害関係のない中立的な立場の調査員が調査を行うこととする。
 また、コミュニケーション能力との関係で、調査の補助を障害者の周囲の援助者に協力をしてもらうことが予想される。そのような時には、協力をしていただく際のルールを作り、そのルールに従って調査の協力をお願いする。
 さらに、調査方法そのものにも工夫が必要である。一回だけの面接ですべての調査を行うのではなく、数回の面接を行い、その中で障害者自身が語る内容に注目するという方法をとる。それと同時に、調査用紙も併用していくことも考えている。

 2、援助者の考える障害者のニーズ調査
 以上のような障害者自身に関するニーズ調査と平行して、調査を実施した障害者を援助する家族、施設の職員、ボランティア等の人々にもニーズの調査を実施する。この場合は、援助者が考えるニーズに関する調査である。
 そして、同じ状況で、援助を受ける障害者自身と、援助をする人とのニーズのずれを明らかにしていきたいと考える。

 3、障害者のニーズと社会福祉サービスについて
 以上のようなニーズ調査をもとに、現在福山市で障害者のために用意されているさまざまなサービスを検討していく。つまり、これまでは、障害者自身の声を聞くことがあまりされず、障害者を援助し、障害者のために作られて来たさまざまのサービスは、障害者自身のニーズをどの程度反映、あるいは考慮して作られているのかを検討するのである。
 障害者自身のニーズを的確に把握してこられなかったという実情を考えると、実際にあるさまざまのサービスは、障害者自身のニーズを元に整備されてきたのではなく、障害者を援助する人々が考えて、障害者に必要であると考えられた結果、用意されてきたきた可能性が強い。そのため、本研究では、以上のような手順を踏み、障害者が生活を送るにあたって、どのような生活上のニーズを持っているのかに関する基本的な情報を得たい。そして、真に障害者に役立つサービスや対応を考えていくことになると考える。



1、研究目的・問題の所在

 障害者の中でも、知的障害者や精神障害者の社会生活を支援していくときに問題となることのひとつに、障害者本人と支援をする周囲の人とのニーズの違い、ニーズの認識のズレがある。
 これまで、知的障害者や精神障害者に関しては、本人が自分のニーズを積極的に表明するということが少なく、表明されることがあっても、障害者本人の意見は重視されることがなかったり、軽く扱われてきた。それは、知的障害や精神障害の特徴とも関係している。障害があるために、自分の状況をうまく言葉にして説明できなかったり、説明するときに論理的に、あるいは系統的に説明できないことがあるからである。
 また、障害に関する周囲の人の誤解や無理解から、障害者本人の意見を積極的に聞いていこうという取り組みもされてこなかった。そのため、障害者本人に焦点を当て、障害者本人の視点から見て、障害者本人の生活に必要な社会資源の開発や制度の整備が図られることがなかった。そして、障害者を支援する家族やその他援助者の視点から見て、必要であると捉えられたことが規準となり、施設・制度の整備が進められてきている。
 障害があるとはいえ、実際に生活をして、不都合や困難を感じているのは、当事者である障害者本人である。その当事者本人の意見や思いに素直に耳を傾ける必要がある。

2、研究方法
 障害者自身が社会生活を送る上でのニーズについて、障害者自身に焦点を当て、障害者自身の社会生活を支援するために必要なニーズの把握が必要不可欠である。研究方法としては、知的障害者・精神障害者自身に聞き取り方式で調査を行っている。今回は、現在実施している予備的な調査の際に出てきた問題点を中心的に報告する。
 今回の調査では、障害者自身を調査の対象としていることが特徴である。そのため、調査を実施する際には、いくつかの問題点がある。それらについて以下述べていきたい。
 1)対象者
  家族の理解があり、本人も話をすることに同意してもらった知的障害者を対象者とした。
  家族(母親)に対しても別室で別の担当者が聞き取り調査を行った。
 2)調査員
  障害者自身と利害関係のない中立的な立場の調査員として私たちが行った。
 3)回数
  調査に先立つ顔合わせを含めて3回実施した。
 4)時間
  夕方から約1時間とした。
 5)方法
  @話題を限定せず、対象者が自由な雰囲気で語れるようにした。ボランティアの学生にも応援してもらった。
  Aこのときに気をつけたのは、堅苦しくない雰囲気と、語ることの自由さである。
  B事前に説明をして話の内容を録音させていただいた。
 6)録音した内容を逐語録として文章化し、話の内容を検討している。(現在進行中)

3、考察
 障害者自身の調査において一番重要な点は、障害者自身の本音をくみ取ることである。しかし、障害者自身のニーズ調査はこれまであまり行われたことがなく、その方法も確立されていない。特に、知的障害者に関しては、調査を実施する際の注意が必要である。コミュニケーションの能力が十分なく、援助者の補助や協力が必要な場合には、なかなか障害者本人の意見が聞き出せない。
 また、援助を必要とする人には援助者との利害関係がどうしても存在する。在宅では、家族との利害関係がある。そのような場合には、障害者といえども援助者に対して遠慮をしたり、顔色をうかがったりする。そして、援助者に気に入られる表現をしたり、本当には思っていないことをお世辞のように表現することがある。そうすると、障害者自身が生活していく上で必要なニーズがありのまま出てこないことになる。
 以上のようなことを考慮に入れ、今回、調査を実施するにあたって、面接による聞き取り調査を実施した。また、コミュニケーション能力との関係で、調査の補助を障害者の周囲の援助者に協力をしてもらうことを当初予想していた。

4、今後の課題
 聞き取り調査を実施しているときには、同じような内容の繰り返しが多く、知的障害者自身に焦点を当てたニーズ調査は不可能ではないかと危惧していた。しかし、録音した話の内容を文章化し、その発言について分析をしていく中で新たな発見が多くあった。
 そのときには流されるようにしていたことや、ちょっとした違和感といったことであったが、文章化されたものを詳細に検討していくと、知的障害があり、直接的に自分の意見を表明することがなくても、話の進行や、話題そのものの意味、やりとりの中に本音がちりばめられていることがわかった。
 この発表に基づいてより建設的なニーズ調査にしていきたい。

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