ちょっとブレイク 〜1999

『虐待で傷ついたこころのための本』、椎名篤子著、大和書房、1,500円+税
 (1999/12/10 追加)
 すでに紹介している『凍りついた瞳(め)−子ども虐待ドキュメンタリー−』の原作者が本の出版をきっかけに読者から多くの手紙を受け取ったのがこの本のきっかけになっているようです。読者からの手紙をもとに書かれていますので、語り口は柔らかく、でもこころの叫びがとても伝わって来ます。

『こころの病と家族のこころ』、滝沢武久著、中央法規、1,650円(税別)
 (1999/10/29 追加)
 この本は精神障害者の家族が書かれた数少ない本です。滝沢武久氏の講演は、私も大阪PSW協会の研修会で聞いたことがあります。そのときの内容もこの本を元にされたものでした。これまで福祉的な視点から精神障害者や家族の生活上の苦悩は表に出ることはほとんどなかったのではないでしょうか。それは、精神障害者とその家族に対する偏見と差別があまりにも強かったからです。そして、このことは現在でもいささかも変わっていないのが実状です。
 こういった実状について精神障害者の家族であり、ソーシャルワーカーでもある滝沢武久氏が語りかけます。
 はじめにには、次のように書かれています。
 「『精神病者家族』あるいは『精神分裂病家族』といわれ、ひごろ、あまりにも抑えた言動しかしない精神病者を身内に抱えた家族。
 (途中省略)
 しかし、精神病者の家族の悩みや苦しみといっても、その家族や本人以外のどんな人がどれほどでも耳を傾け、誰がその悩みや苦しみを取り除くことに努力してきたでしょうか。
 (途中省略)
 小書は、私自身の50年あまりの人生の歩みと、職業として患者や家族に接してみた、その中からの声を知らせたかったものです。」

『痴呆の常識・非常識 −まんが・エッセイでやさしく理解する−』きのこエスポアール編著、日総研、2,000円
 (1999/06/26 追加)
 岡山県笠岡市にある痴呆性老人専門病院「きのこエスポアール病院」が出している本です。まんがを使って痴呆性老人のことをわかりやすく書かれています。プロローグに次のような文章があります。
 「痴呆に関する情報は現在、おびただしいものがあります。それらの情報を見てみると、そのほとんどが『痴呆』についての情報であり、痴呆を持った人、つまり『痴呆性老人』についての情報はきわめて少ないことに気が付きました。 −中略− そして、北欧を中心とする先進的な地域で普及しているグループホームという形が話題となっています。そこでは、痴呆性老人がこれまで生きてきた生活環境を維持しながら、やっかい者としてではなく、痴呆を持ちながらも折り合いをつけて生活をしている生活者としてみていこうという活動が実践されています。」
 病院が出している本ですが、上記のように生活者としての視点で書かれている本です。まんがもあり、読みやすく書かれています。

『児童相談所で出会った子供たち』、山縣文治監修、ミネルヴァ書房、2,200円
 (1999/06/23 追加)
 この本は、児童相談所に実習に行く学生が読むのに良い本はないだろうかと思っているときに、偶然本屋で見つけました。紹介の文には、次のようなことが書かれています。
 「日々、ありとあらゆる子どもの問題・家庭の事情が持ち込まれる児童相談所は児童福祉行政の最前線。社会の変化のなかでゆれる親と子を常に支えてきた児相、今大きく変わろうとしている児童相談所への期待とその活動の実際を20のケースで紹介する。」
 ここにあるように、児童相談所で行われている親や子どもとの関わりを、事例を通して紹介しています。これまで、児童相談所の内容を紹介した本でこれほどわかりやすく書かれたものに出会ったことはないように思います。監修をされている山縣先生は、長く児童相談所の活動に関わってこられています。その関わりの中で生まれてきた本で、児童福祉に関心のある人に読んでほしいと思っています。

『子どものための精神医学』、大原健士郎、講談社、1400円
 (1999/2/19 追加)
 心の健康(メンタルヘルス)への関心は高まってきていますが、初めて接する人には取っつきにくいことが多いのが実状です。この本は、前書きにあるように、小学高学年から中学生あたりを読者対象として書かれた本です。そのため、結構難しい内容が分かりやすく書かれています。
 このほかに、「現代の大人たちは、わが身を顧みる必要がある。そして、かつての日本の大人がそうであったように、子どもが何を生きがいにし、何を喜び、何を悲しんでいるのか、子どもたちの『こころ』を知る努力をしなければならないように思う。事は切迫している。自分の足もとを、まず見ることである。すべての問題行動が、精神医学とかかわりがあるというつもりはない。しかし、登校拒否にしても、家庭内暴力にしても、自殺・非行・犯罪にしても、精神医学を無視することはできないケースも少なくない。」と、前書きにあります。

『戦後社会福祉教育の五十年』、一番ケ瀬康子・大友信勝・日本社会事業学校連盟編、ミネルヴァ書房、3500円
 (98/11/02 追加)
 この本は、社会福祉教育の55年体制を整理し、これからの社会福祉教育を考えることの必要性から作られた本です。
 扉には、次のように書かれています。
 「日本社会事業学校連盟は1955(昭和30)年に発足し、我が国の社会福祉専門教育をになう組織として活動してきた。小子高齢社会のなかで新たな国民の生活ニーズにこたえる社会福祉専門職養成が注目を集め、福祉系大学の新設も続いている。
 社会福祉基礎構造改革をうけ社会福祉教育のあり方が問われている状況のもとで、日本社会事業学校連盟が戦後社会福祉教育の歩みをまとめ、今日の到達点を総括し、今後のあり方をうちだした意義は大きい。
 本書は、戦後社会福祉教育がどのように展開されてきたのか、その画期をなす専門職制や実習等のとりくみが学校連盟活動に関わった当事者の手によって実証的に示され、アジアや世界に開かれた社会福祉教育の展望が語られている。本書が21世紀における社会福祉教育・専門職制のあり方を追求する方々に広く読まれることを期待する。」

 『マンガ「寝たきり婆あ」わがまま対策マニュアル』、門野晴子、あやせ理子、講談社、本体1400円
 (98/8/27 追加)
 ここのところ、マンガばかりを紹介していますが、さまざまな社会福祉の分野を知ってもらうためには、読みやすい、取っつきやすい本が必要だという考えからです。今回紹介する本も、こういった考えが基本にあります。
 裏表紙には次のようなことが書かれています。「からだの自由はきかないけれど、口だけはモーレツに達者な『婆あ』と、その娘、孫娘が繰りひろげる爆笑家族喜劇!! ズバズバと本音を言い、痛いところを突いてくる『婆あ』のわがままな要求にムカッ腹をたてながらも、ユーモラスに応えていく娘と孫娘……。きれいごとではすまされない厳しい家族介護の現実から目をそむけることなく、いかに手を抜いて楽にやるかを笑いのうちに教えてくれる絶好のテキストブック!! 介護する人はもちろん、される人にも役に立つ本!!」とあります。

 『HOTEL(ホテル)』(1〜15巻)、石ノ森章太郎、小学館(ビッグ・コミック)
 (98/7/27 追加)
 今回はこの中でも第7巻の第59話、「HOSPITARIS(ホスピタリス)」を紹介します。ホテルの語源のhospitarisと病院(hospital)のことが出てきます。サービス業としてその根底には「手厚いもてなし」がこの言葉にあります。私が病院にPSWとして働いていた時にも同様のことを講演で聞いたことがあります。
 その時も、病院の職員にはこの「手厚いもてなし」のこころが欠けているのではという話しでした。翻って、社会福祉の実践現場や教育の世界を見ると、考えさせられます。最近は社会福祉援助も社会福祉サービスとも呼ばれます。「手厚いもてなし」イコール、サービスということを改めて考えさせられるマンガです。

 『家裁の人』(1〜15巻)、毛利甚八作、魚戸おさむ画、小学館(ビッグ・コミック・オリジナル)、各509円
 (98/7/22 追加)
 下記で、『わたしは家裁調査官』を紹介していますが、これはその家庭裁判所調査官も出てくるマンガです。主人公は、家庭裁判所の桑田判事です。以前、テレビドラマで片岡鶴太郎さんが桑田判事を演じていました。
 家族という「閉じた世界」のさまざまな問題が子どもの犯罪という形を通して見えてきます。

 『「世界一」の医療費抑制政策を見直す時期』、二木 立著、勁草書房、1995年、第3刷、2575円
 (98/2/19 追加)
 筆者は医療行政を3つの型に分け、その中で日本の医療行政の特徴を医療費抑制のもっとも厳しいものとしてとらえている。そして、医療費抑制政策の元、日本の医療の質の低さを指摘している。
 昨年12月に成立した介護保険のことにも触れられており、医療の実体について明快に述べている。

 『凍りついた瞳(め)−子ども虐待ドキュメンタリー−』、漫画:ささや ななえ、原作:椎名篤子、集英社、650円
 最近ようやく知られるようになってきた児童虐待を漫画で描いています。漫画で描かれているので、視覚的に虐待がどのようなものなのかがわかります。
 また、登場人物に医療ケースワーカーや福祉事務所のケースワーカー、児童相談所や児童福祉の施設、保健婦、小児科医、小児精神科医等がでてきます。それらの人々がどのように関わっているのかや、虐待を受ける児童の問題や、家族の問題などについても描かれています。

 『これからの精神保健福祉 −精神保健福祉士ガイドブック−』、日本精神医学ソーシャルワーカー協会編集、へるす出版、2,300円(税別)
 昨年、秋の国会で審議され、12月12日に成立した精神保健福祉士資格に関するガイドブックとして出版されています。
 社会福祉士資格が出来てきた経過や、その際に医療分野が除外された理由、その後の資格化への協会としての取り組み等についてまとめられています。その他、精神医医学ソーシャルワーカー(PSW)の歴史、実際の活動、事例、Q&Α、業務指針などの精神医学ソーシャルワーカーのことがわかるように工夫されています。

 『ホスピス通信−生の終わりに小さな「もてなし」−』、山崎章郎監修、  講談社、1700円(税込み)
 QOL(生活の質)、インフォームド・コンセントなど、ホスピスでの実践から社会福祉の分野に入ってきた概念はたくさんあります。ホスピスという言葉は結構聞くようになりましたが、今ひとつその内容や現状は知られていません。
 社会福祉援助活動に関心のある学生が興味を抱いた分野であり、その内容を知りたいと考えているときに、本屋で見つけた本です。その書名の通り、ホスピスの発行した通信(新聞)の内容をまとめたものです。
 ホスピスの誕生するに至った経過や、日常的な活動の内容などを医師・看護婦・ボランティア・患者の家族など、さまざまな人の手記で構成されています。また、ソーシャルワーカーのことにも触れられていたり、用語の解説などがあります。
 本の扉には、「1989年(平成元年)4月、病室の一角のわずか1ベッドから始まったホスピスの試み。それはやがて、専用の病室を有し、そして独立した病棟を構えるまでになった。病む人自身が、その人らしい、最後の輝かしい『生』を送ることができるようにと力を尽くすスタッフ、ボランティア。支援する数限りない人々の善意。その軌跡を、本書は、機関誌『聖ヨハネホスピス通信』の中にたどる。」とあります。

 『みんなの精神科』、きたやま おさむ(精神科医)、講談社、1500円(税別) (97/09/18 追加)
 この本は、以前から本屋で見つけていたのですが、縁がなくてしばらく買っていなかったものです。そのためか、購入後一気に読んでいました。著者自身が「あとがき」で書いているように、口述筆記で書かれたものです。
 一部を転記すると、「これは私がディスクジョッキーのように精神医学について語れるか、といった実験のようなものですね。」、となっています。そのため、先に書いたように読みやすくなっています。一般の人が対象のため、内容も取っつきやすく、映画や歌をはじめとして、いじめ、阪神・淡路大震災のことなど、変化に富んでいます。
 また、「私がここで意図したものをわかりやすく言うならば、やはり精神科医の話というものに慣れてもらう、あるいは精神医学的な話の内容になじんでもらう、してわかりにくいといわれているものについて、わかりやすく感じてもらうことです。」とも書いています。精神病や精神障害について書かれた本はたくさんありますが、読んでいるうちに頭がぼーっとなってしまうくらい難しいものがほとんどです。
 そのことがかえって精神病や精神障害をわかりにくくしているのはそのとおりです。ディスクジョッキーを聞くように、読んでみてください。

 『生活リハビリとはなにか』、三好 春樹著、筒井書房、1,500円
 老人に対する介護の問題を「生活リハビリ」の視点から書かれた本です。この中では、看護になくて介護にあるものとして「生活」をあげています。「生活」というと、専門的でないようにとらえがちですが、逆説的にはそれが社会福祉の専門性として考えられます。
 老人ホームを「生活の場」としてとらえる視点は以前から言われてきましたが、リハビリを医療とは違った視点からとらえているのでぜひ一読をおすすめします。

 『どんぐりの家』、山本おさむ、小学館
  この本は、週間漫画誌に連載されていたものがまとめられ、単行本として発行されたものです。H10年2月現在第7巻まででています。
 重複聴覚障害者の問題をさまざまな角度から、捉え、表現されています。なかなか現状を知る機会のない重複障害者の生活上の問題が見えてきます。     

 『ブッタとシッタカブッタ』、小泉吉宏作、メディアファクトリー (東京都港区、03-5472-8441)
 この本は、私が担任をしていた専門学校の学生が教えてくれたものです。最近は、月刊福祉(1996年12月号)でも紹介されていました。1997年4月6日付けの朝日新聞に載っている記事から転記します。
 ストレスを抱えたビジネスマンやOLたちの間で、マンガ『ブッタとシッタカブッタ』、(作・小泉吉宏)のシリーズが静かなブームになっている。お釈迦様の姿をした「ブッタ」を案内役に、主人公のブタ「シッタカブッタ」が心とは、自分とは、悩みとは、幸せと不幸せとは……といろんなことを考えていく。本の帯に「心の運転マニュアル本」「『心』を語る本」と書かれ、精神科などの病院が待合室にそろえていたり、医師が患者に薦めたりもしている。現在3冊出版されているが、「精神科で売れる漫画なんて初めて」といわれ、続編を期待する声もある。

 『ベルナのしっぽ』、郡司ななえ著、イーストプレス (東京都文京区、03-5395-5971)
 この本は、朝日新聞の天声人語でふれられていたのをたまたま読んだのがきっかけで知りました。最初は犬が大の苦手だった作者が、病気が原因で 27歳の時に失明し、盲導犬と接することになります。それは「お母さんになりたい」という夢を実現させるために必要なことでした。盲導犬と生活のパートナーを組んで夢である「お母さんになり」、子育てをしていきます。
 ベルナという盲導犬に助けられて子育てをしていきますが、犬の寿命はそう長くはありません。まして、盲導犬としての寿命はさらに短くなります。そして、盲導犬であるベルナが白内障になってしまいます。後は、実際に読んでみてください。恥ずかしい話ですが、私は地下鉄の中で読みながら泣いてしまいました。

 『わたしは家裁調査官』、藤川洋子、日本評論社、1996年、1854円
 社会福祉とは関係がないように思われるかもしれませんが、家庭裁判所の調査官の仕事は、実質的にはケースワーク(個別援助技術)です。
 この本では、児童福祉の分野で、少年非行や犯罪を犯さざるを得なかった少年の家庭背景やその心理的な状況について書かれています。また最近、マスコミにも話題に上る虐待についても触れられています。これまでには家庭裁判所調査官の仕事について、このような形では書かれることはありませんでしが、重要なことを読みやすくまとめられています。

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