「びんご・生と死を考える会」
心あたたかな医療110番
相談の内容紹介 42

質問42
 父が病気になってから、色々と勉強していて、このHPにたどり着きました。どうぞよろしくお願いします。

 50歳代の父が大学病院に入院致しました。さまざまな検査を経てからの診断は、腎臓癌が原発で、それがかなり転移しつつあるということでした。
 50歳代、170cm、体重70kg程。タバコを大量に吸っていた。お酒は少量飲んでいた。骨盤などの骨、肝臓にも腫瘍が伸びつつある。腎臓からの静脈に、腫瘍性の血栓があり、血管が塞がれているため、周囲の血管が代用している。MRIで、肺に2箇所ほど影が見られた。

 入院するまでの父の経過を追ってお話すると、まず最初に腰痛が現れました。それが2000年の9月頃かと思います。それから、整骨院、指圧、針、整形外科などあちこちの病院に通い続けて、今年、2001年になってから、ようやく整形外科にて紹介状をもらい、現在に至ります。

 正直を言って、誰も気がつかなかった事が不思議なくらいで、発見が大幅に遅れたという気持ちはありますが、今みつかった時点で、父にどのような選択肢が残されているのかと考えていきたく、メールを送らせていただきました。

 最初、整形外科にいましたがその後、泌尿器科へ移り、そちらの先生からは、手術はできず、今の現状を維持するために、インターフェロンと、抗癌剤による治療を様子を見ながら行っていくとお聞きしました。

入院してからの治療過程をまとめてみたいと思います。

入院>車椅子での生活が始まる。
検査>MRIや、骨シンチ、血液検査等、一通りの検査を受けました。
放射線>6月より開始
    股関節(左骨盤)肩、背中へ疼痛緩和のため照射。
    聞いた所、強さ40で一月程受ける予定とのこと。
    肩、背中に関しては、あと2回で終了予定。(回数制限があるため?)骨盤に対しては、もう少し続く。
    痛みは薄らいだが、背中の別の個所が痛くなった模様。別の個所への転移
    食欲あり。元気もあり、病気とは思えない。
発熱>7月 昼頃、7度、その後8度へ。
    だるさは無く、熱があるのみ。
    本日、主治医の先生から詳しいお話を聞く事になっていたため、緊張によるものか?
    (MRIの結果を見ながら説明を受ける。)
    夜には9度の熱となり、座薬を使う。
発熱が続く>昨日から発熱が続くが、微熱である。
泌尿器科へ>7月
        泌尿器科へ移り、抗癌剤(UFT、TG434)が始まる。
堰が出る>7月 深夜、堰が出た折、背中に強い痛みが発生し、先生に見てもらう。説明時点で、骨が折れないようにという話があったので、精神的にもとても気になるよう。堰は、放射線をのどの付近に当てているため、痛みが出るかもしれないと聞いていた。

インターフェロン開始>7月
              インターフェロン(スミフェロン)が開始される。
 (就寝前、21時頃注射。土、日は休みで。)抗癌剤、インターフェロン、放射線の3つの治療方が合わさり、本人の負担も多いようだ。節々が痛く、堰が出て、声が聞き取りづらい程。だるさからか、骨への不安か、トイレに行く、歯磨きをするなど、日常生活が困難な様子。朝食は少し辛い様子だったが、昼、夜は通常に食事を取る。果物なども食べる。

そして、現在に至ります。

 今、疑問に思っているのは、使用している薬の事、副作用がどの程度出ているのかということです。

 まず、スミフェロンの効果についてですが、腎臓癌についてはあまりインターフェロンの効果は無いと聞きました。なぜ、腎臓には化学療法が効きにくいのでしょうか? 転移部分(肺、骨、肝臓)には効果的なのでしょうか?

 使用することの有用性と、副作用が本人に与える影響を見て、必要な場合は使用を停止していただきたいと思うのですが、具体的に現れる副作用の症状はどのようなものでしょうか?    (糖尿病になるという話も聞きましたが……)
 また、効果が上がっている場合、どの程度の期間続ける物なのでしょうか?

 熱が出ているというのは、放射線の副作用でしょうか?それとも別の物でしょうか?
 放射線が終了すれば、現在の状況は緩和されるでしょうか?

 父の副作用の出方は、他の患者さんと比べて、どの程度の重さなのでしょうか?
 人それぞれだとは思うのですが、まだ、ましな方なのか、それとも重い方なのか……。治療を乗りきれば、可能性があるというなら続けても良いと思うのですが……。

 現在、代替医療にも興味を持ち、サメの軟骨、アラビノキシラン、ベータグルカン、クロレラドリンクを飲んでもらっています。藁にもすがる思いです。

 本人は、とても我慢強く、色々な症状をあまり訴えない性格です。精神的には、強い方だと思い、病状の説明なども一緒に聞きました。それでも、ショックでない人間などいないと思います。こんな父に出来るだけの治療を受けさせてあげたいと思っています。お世話になります。よろしくお願いします。
回答42
>  今、疑問に思っているのは、使用している薬の事、副作用がどの程度出ているのかと いう> ことです。
>  まず、スミフェロンの効果についてですが、腎臓癌についてはあまりインターフェロンの効果> は無いと聞きました。なぜ、腎臓には化学療法が効きにくいのでしょうか? 転移部分(肺、> 骨、肝臓)には効果的なのでしょうか?

 腎ガンの細胞になぜ薬が効きにくいのかは、まだ分かっていません。細胞の特性だろうといわれています。

>  使用することの有用性と、副作用が本人に与える影響を見て、必要な場合は使用を停止し> ていただきたいと思うのですが、具体的に現れる副作用の症状はどのようなものでしょうか> ? (糖尿病になるという話も聞きましたが……)また、効果が上がっている場合、どの程度> の期間続ける物なのでしょうか?

 咳や呼吸困難、食欲不振、全身倦怠感、貧血、肝機能障害、その他色々な症状が出る可能性があると思います。

>  熱が出ているというのは、放射線の副作用でしょうか?それとも別の物でしょうか?

 腎ガンによる発熱の可能性もあると思います。

>  放射線が終了すれば、現在の状況は緩和されるでしょうか?

 放射線による障害であれば、やめれば回復してくると思います。

>  父の副作用の出方は、他の患者さんと比べて、どの程度の重さなのでしょうか? 人それ> ぞれだとは思うのですが、まだ、ましな方なのか、それとも重い方なのか……。治療を乗りき> れば、可能性があるというなら続けても良いと思うのですが……。

 咳が気になります。もしもインターフェロンによる間質性肺炎や肺線維症なら重篤な副作用だと思います。

>  現在、代替医療にも興味を持ち、サメの軟骨、アラビノキシラン、ベータグルカン、クロレラド> リンクを飲んでもらっています。藁にもすがる思いです。

 ガンの治療で、ただ何でも飲めば効くと云うようなインスタントな方法はありません。治ると信じて、治療を受けるのか、本人の気持ち次第です。ガンは自分で作った病気で、自分で治さなければいけない病気です。

>  本人は、とても我慢強く、色々な症状をあまり訴えない性格です。
> 精神的には、強い方だと思い、病状の説明なども一緒に聞きました。
> それでも、ショックでない人間などいないと思います。こんな父に出来るだけの治療を受けさ> せてあげたいと思っています。お世話になります。よろしくお願いします。

 参考までに、医者向けの参考書の内容を紹介しておきます。

腎腫瘍(腎細胞癌)
Renal Tumor(Renal Cell Carcinoma)
里見佳昭  横須賀共済病院・泌尿器科部長
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 腎癌は近位尿細管上皮由来の腺癌といわれている.しかし最近では遠位尿細管由来,集合管由来のものも含まれているといわれ,色素嫌性腎癌(chromophobe cell renalcarcinoma),ベリニ管癌(Bellini duct carcinoma)などが独立の気配をみせている.また,近位尿細管由来のものもVHL(von Hippel-Lindau病)遺伝子が原因かといわれる淡明細胞型や,この遺伝子以外の遺伝子の関与が考えられる乳頭型腎癌など,単一と思われた腎細胞癌も細分類し,それぞれに合った治療を考える時期に入った. 腎細胞癌の特徴は,1)初期は全く無症状に経過する,2)術後1-2年で死亡するような急速に増殖するrapid growing typeと,十数年してから再発をするようなslowgrowing typeがある,3)免疫機構が関与する.CTや超音波診断の発達により最近は直径4cm以下の比較的早期に発見される症例が増えてきた.それでも5年生存率(cause specific survival)56%,10年生存率50%とけっして安心ならない癌である.

◆治療方針

1.治療の原則
 個々の症例によりその発育速度は癌の異型度gradeにより著しく異なり,この特徴を考慮して治療方針を決める.術前はgradeがわからないので,代わりに臨床データである発熱(37.2 ℃以上),赤沈亢進(≧30mm/1時間値),CRP陽性,α2-globulin上昇(≧10%)のうち,3項目以上該当する症例をrapid type, 3項目以上該当しないものをslow typeとし,その中間はintermediate typeとし,これはrapid typeに近い経過をとると考え分類し,slow type=low grade, rapid type=high gradeと考え,治療方針を決める.

2.治療法
 有効な薬剤がないため手術療法が主体となる.

a.根治的腎摘除術 遠隔転移のない症例および遠隔転移があるがslow typeの症例ではこの手術が適応となる.リンパ節郭清は6-10%(小児腎癌では30%以上)の転移頻度を考え必ず行う.

b.腎部分切除 単腎,対側腎機能不全,両側腎癌のときは適応である.対側腎正常の場合も腫瘍径4.0cm以下の場合患者と話し合い,希望があれば部分切除を行う.今後は部分切除が主体の時代が到来する可能性が高い.

c.転移巣に対する手術 原則どおりslow growing typeであれば長期生存が期待できるので積極的に手術する.

d.薬物療法 転移に対する治療として行う有効な薬剤はないに等しく,やみくもに化学療法や免疫療法を行うべきでない.slow growingは免疫療法(インターフェロンα)から,rapid growingは抗癌剤(MVP療法)から行っている.ユーエフティ(10%),プロゲステロン(5%)も時に有効な場合があり,副作用が少ないので使いやすい.術後補助療法にはインターフェロンαは有効でなく,副作用が少ないユーエフティ,プロゲステロンが長期投与に耐え適当である.

1)インターフェロンα
処方例
スミフェロン 600万単位 連日筋注
 外来にて自己注射で行う.2-3か月で転移巣縮小しなければ終了とする.
 副作用は肺線維症が重篤なもので,他に食欲不振,眩暈,全身倦怠なども中止の原因となる.

2)インターフェロンα+MVP療法
処方例
0時:ラクテック500ml+メイロン40ml 点滴静注+ビンブラスチン(VLB) 3.5mg/体表面積 側  管注
1時:5%ブドウ糖500ml+メイロン40ml+メソトレキセート350mg/体表面積 6時間かけ点滴  静注
7時:ペプレオ 10mg 静注
10時:ロイコボリン 15mg 経口 3時間ごと8回,6時間ごと8回

 以上を1クールとして2-3週間に1回行う.1-2クールで効果がなければ中止.スミフェロン300-600万単位毎日,3週間投与.

3)その他
処方例 下記のいずれかを用いる

1)ユーエフティ 4錠 分2
2)ヒスロン(プロゲステロン) 40-100mg 分3
 いずれも8週間で評価し,無効の場合は中止する.

●患者説明のポイント
 治癒手術ができても,特に径4cm以上でslow growingの症例においては10-20年にわたり再発の危険性があるので,年数回定期検診するよう説明する.

●看護上の注意
 インターフェロン療法の患者は,間質性肺炎(呼吸困難,息切れ),倦怠感,うつ症状など重篤な副作用があるので十分に注意する.
(今日の治療指針1998年版/(c)1998 IGAKU-SHOIN Tokyo)

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